ブレンボのマスターシリンダーで、古いバイクにイカした制動性を装備しよう

2017/03/03

 数年落ちのカワサキをブレンボでリフォーム

10年もののバイクに乗って、ブレーキングで新世代のバイクに道を譲る。一見するとこれは大金を投じない限り妥協せざるを得ない一種の「定め」というか「諦め」のように見られますが、ブレンボならその問題に最適な「答え」を出せるかもしれません。

その証拠に、2009年式のカワサキ Z750に私たちが行った数点の改造例をご紹介します。

 

 

このネイキッドバイクのオーナーはイタリア人女性のNicole(ニコル)さん。彼女は標準装備のブレーキングシステム(フロント:300 mmディスク2枚とツインピストンキャリパー、リヤ:200 mmディスク1枚とシングルピストンキャリパー)のパフォーマンスに不満を抱いていました。

数千キロを走行した後のバイクにはよくあることですが、彼女のバイクのブレーキングシステムは確かに劣化していました。ニコルさんが気になっているのは急傾斜でのブレーキング性能。

「私はよく、アプリリアTuono V4とドゥカティStreetfighterに乗る友人2人とツーリングに出かけます。上り坂やフラットな路面であれば何とか2人についていくことができるのですが、坂道を下るとき、その友人たちのバイクのような制動性が効かないんです。」

 

 
 

そして更に、彼女の話によれば、ブレーキパッドのかみ合いも新車時のころと比べれば頼りなくなり、レバーを握ったときのレスポンスが、良好なブレーキングシステムを備えた他のネイキッドバイクのそれと比較すればやはり悪くなっているとのことでした。

また、アグレッシブなブレーキングを繰り返すとディスクとパッドの温度が急激に上昇し、制動力が低下します。

つまり、これらを総合的に見て判断すれば、彼女のZ750のシステムはパワーとモジュール性の両面が不足しているようでした。 しかしこれは特別なことではありません。

ニコルさんの乗るZ750のようなバイクでは、購入してから数年後にこのような問題がよく起こります。そしてこのような問題を引き起こしやすいのが、バイクの新車時からのオーナーや途中からそれを引き継いだオーナーが、バイクのメンテナンスを怠っている場合です。

メンテナンス不良というのは決して些細な問題ではありません。なぜなら、すでに経験済みの方も多いかもしれませんが、適切なメンテナンスを怠ると、それまで正常だったブレーキングシステムが突然故障して大事故につながる恐れがあるからです。


 
 

幸いなことに、彼女のZ750のディスクはまだ良好な状態でしたので、私たちはこれを交換する必要はないと考えました。 しかしブレーキフルードは経年劣化の兆候を見せ、大量の湿気を吸収しているため、絶対に交換する必要があります。

ブレーキシステム全体の性能を保つためには、たとえ最低限の走行距離を走っていなかったとしても2~3年ごとにフルードの交換を行わなければなりません。

そこで私たちはこのブレーキフルードをブレンボ製LCF600ブレーキフルードに交換しました。このフルードはストリートバイクはもちろんのこと、レース用バイクにも使用できます。


 

更に、ほとんど極限状態まで使い切られた可哀そうなパッドを交換すべく、私たちは様々な製品が紹介されているブレンボのカタログから、このバイクの仕様とニコルさんの要望にぴったりの交換部品を探し出しました。彼女のバイクに我々が選択したのはSCパッド。

これは低温での優れた性能を保ちながら高温時にも申し分ない摩擦係数を実現してくれると定評のあるパッドです。

つまり、SDパッドはレース走行時のパフォーマンスを求めながら、日常使いで必要となるバランス性も諦めたくない、そんな欲張りなライダーに最適なコンポーネントと言えます。

 

 
 

しかし、品質の飛躍的向上は、ブレーキマスターシリンダーの交換によって初めて完成されます。

ニコルさんのZ750に標準装備されたマスターシリンダーはかなり経済的なコンポーネントではありましたが、レーシングレプリカのバイクに見合うパフォーマンスを提供できるものではありませんでした。そこで、彼女のライディングエクスペリエンスをより良いものにすべく、私たちはブレンボ15RCSマスターシリンダーを搭載することにしました。

「RCS」は「Ratio Click System(ラジオクリックシステム)の略であり、ラジアルマスターシリンダーの製品ラインに属しています。RCSの特徴は素早い切り替えが可能なインターアクスル(18 mmおよび20 mm)。より繊細な操作性が必要な場合は18 mm、レバーにかける力を最小限に抑えながら制動力を最大限引き出したい時には20 mmを選ぶことができます。

ニコルさんのZ750には2個のツインピストン型フローティングキャリパー(フロント)が使用されていたため、15 mmのピストンを装備するマスターシリンダーがベストソリューションとして選択されました。 すべての作業が完了したのちに、私たちはZ750をニコルさんに返却しました。パッドをしばらく馴染ませて、彼女は新しいブレーキングシステムの品質を確かめました。

1000 kmほどを走行したとき、彼女は私たちにこう言いました。「私のバイクだと分かる2~3か所の特徴がなかったら、きっとあなたたちがライセンスプレートを付け替えて、私のZ750を別のものにすり替えたんだろうって疑ってたと思うわ!!本当に信じられない。こんなに良くなるなんて、夢にも思わなかったもの。もう旧式のブレーキなんて言わせないわ」


 


 
 

ニコルさんによれば、「ブレーキシステムのパワーとレスポンスは素晴らしいわ。前はレバーがふわふわする感じがしていたの。細かい調整もすごくよくできるようになって、今ではレバーにかける力に比例するように制動力が変わるの。

前のマスターシリンダーはターンインでレバーを強く握ってもブレーキシステムのレスポンスが変わることはなかったわ。」ということでした。

比較的少ない費用負担で、ニコルさんはブレーキングシステムの復活だけでなく、そのパフォーマンスの向上も行うことができました(しかもあらゆる制動条件で!)。

エンジンのサイズやメーカーに関わらず、このような改造は他のモデルでも可能です。

古くなったブレーキングシステムを復活させて、かつての輝きを取り戻そうとするのは、何もニコルさんだけではありません。


 

それどころか、たとえ機能部品に何ら不具合がない場合であっても、これまでに多くのライダーがこのような改良を通して愛車の性能を向上させています。その手法は様々で、ディスクを交換する人がいれば、キャリパーを変更する人もいる。はたまた、マスターシリンダーを取り替えている人もいます。

もっと強者になると、元のブレーキングシステムをすべて取り払って、より高性能のブレンボシステムを設置するスペースを作る人もいます。 もし読者の皆さんの中にこのような経験があり、なお且つ時間もおありの方がありましたら(性別は問いません)、是非ともブレンボ製品を使ったあなたのバイク改造ストーリーをお聞かせください。寄稿の際には、改造の詳しい内容と、できればお写真を添えて、web@brembo.itまでご連絡ください。

最も興味深くユニークなストーリーをブレンボのウェブサイト上でご紹介させていただきます。 次のブレンボ・アンバサダーは、あなたかもしれません。 そう。あなたのブレーキも、きっと蘇る。