ブレンボの2022年F1世界選手権ブレ-キシステムについて知っておきたいこと

2022/03/14

 F1新時代2022シーズン、ブレンボグループは参戦全10チームに供給

​​​​​​​​​​​来たる3月20日にバーレーンGPで開幕する新シーズンに向けて、ブレンボはF1グランプリとの結びつきを一段と強固にしました。


ブレーキ技術の開発で業界をリードするブレンボは、過去47年にわたるF1マシンへの製品供給を通じて27回のドライバーズチャンピオン、31回のコンストラクターズチャンピオン、463回の優勝を支えた膨大な実績を生かし、今シーズンはチームごとにブレーキシステムをカスタマイズしました。大半のマシンには油圧系統(キャリパー、マスターシリンダー、バイワイヤユニット)や摩擦材(カーボンディスク、ブレーキパッド)も供給します。​




 

2022 F1マシン用の新たなブレーキシステム​​​


2022年のF1では、ブレンボのブレーキシステムが重要な役割を果たすことになります。ブレンボの技術者らが開発したブレーキシステムは、トップクラスの性能は維持しつつFIAの最新レギュレーションと制限に準拠した、全く新しいものに仕上がっています。​ 


新たなレギュレーションではタイヤサイズが13インチから18インチに変更され、ブレーキディスクのサイズも上がりました。ブレンボが2022シーズンに供給するカーボンディスクは、フロント用は径278mmを328mmまで上げ、厚さは従来と同じ32mm。リア用は266mmから280mmになり、厚さも28mmから32mmに上がっています。


キャリパーとブレーキパッドの位置も設計し直しました。​大幅な変更は「規定パーツ」であり、全マシン同一が求められるフロントウィングにも。この変更を利用したマシンの空力負荷向上やブレーキシステムの空冷が制限されました。 ​


 


ブレーキディスクのデザインに影響する規定もあります。ブレーキディスクの孔は2021年までは直径2.5mmで1,480個が上限でした。今シーズンはフロントが1,000個から1,100個までに減り、リアも以前の1,050個から900個に減りました。直径も変更されて3mm以上となりました。つまり、ブレーキディスクは厚さが従来と同じである一方、孔は大きくなり個数が減るため、空冷性は下がります。多孔タイプのブレーキパッドも今シーズンは禁止されたため、ブレンボからは2種類のセッティングを選択肢としてチームに提供します。​


重量については、2022年のブレーキシステムは前シーズンと比較してタイヤ1本あたり約700g、マシンの総重量では約3kg増えました。​


 

全チームがブレンボグループのキャリパーを採用​​


2022年、ブレンボはまたひとつ歴史的なシーズンを迎えることになりました。参戦10チームすべてにキャリパーを供給するのは1975年以来初めてです。ブレンボ製キャリパーを9チームに供給し、残り1チームにはブレンボグループのブランドであるイギリスのコヴェントリーに本社を置くAPレーシングがキャリパーを供給します。​


 


F1ドライバー全20名とも、ニッケルメッキ仕上げの新型モノブロックキャリパーを使用。ピストン数はレギュレーションで認められている最大数の6ピストンです。ブレンボとAPレーシングが開発した、ブロントとリア間で制動力のバランスを調整するリアブレーキ用バイワイヤユニットも、5つのチームが採用します。​


 

カスタマイズ、テレメトリー、メンテナンス​


セッティングは各マシンで異なります。剛性より軽量性を求めるチームもあれば、重くても剛性を優先するチームもあります。ブレンボグループのエンジニアは各チームと協同して、マシンごとに重量と剛性のベストバランスを割り出し、それぞれに最適なブレーキキャリパーに仕上げました。ホイール内のセンサーを通じてブレーキディスクとキャリパーの温度を各チームが常に把握できるため、チームもドライバーもマシンのブレーキ性能を管理し、最大限に発揮させることができます。



 

 

​2022年のレギュレーションについて​​


2022シーズンのレギュレーションで最も大きく変わった点のうち、外見からわかりにくい箇所、フロア下に影響するものがあります。段差(「ステップドボトム」)をなくし、代わりにダウンフォースを発生しやすくするベンチュリトンネルを2本設けることで、マシンが発生させる乱気流の影響を後続マシンが受けにくくなり、結果的にオーバーテイクを狙うマシンがより至近距離でしぶとくチャンスをうかがえるようになります。​


2021シーズンまで認められていた空力は、バージボードを含めて全面的に廃止。これを受けてウィングは簡素化され新しい外観になりました。タイヤにも重要な変更が加わっています。低扁平化でホイール径が大きくなり、ホイールカバーも導入されます。タイヤに関しては公道仕様のスポーツカーのような、より硬いコンパウンドになりました。これらの新たなレギュレーションと扁平タイヤの導入によって、各チームはサスペンションの見直しを迫られました。​

これらの対応を、各チームは2022シーズンのチーム予算1億4,000万ドル内で行いました。2021シーズンの1億4,500万ドルより減額となっています。チームが要望すれば、ダイナミックエアインテーク、エンジンカバー、ウィングプロファイルなどはさらにカスタマイズが可能です。​


2022シーズンではマシン重量が昨シーズンの752kgから795kgに増えています。車重増加に加え空力も新しくなったことで、どのサーキットでもドライバーは、過去のシーズンとは違うブレーキングポイントをいかに早くつかめるかが問われそうです。