ジャック・ミラーと「ストッピー・チャレンジ」

2021/06/07

 神業の秘訣はブレンボ製ブレーキ

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​ここ数ヶ月、スーパーバイク世界選手権(SBK)の選手の間でストッピー・チャレンジが大流行。選手がピットレーンに戻るとき、特に好成績を収めた後は(順位が悪かったらはしゃぐ気になどならないでしょう)、ウィリーを真逆にした走りを披露します。​


前輪を地面から上げるわけではないので、実は割と簡単にできる技です。マシンが100馬力超で、その総合重量を考えればなおさらです。MotoGPでのマシンの最低重量は157kg(346lbs)、スーパーバイクは168kg(370lbs)、Moto2ではライダーの体重込みで217kg(478lbs)です。​



 

こうした数値を実現させているのが、驚くべき軽さのブレンボのブレーキパーツとマルケジーニのホイールです。17インチの鍛造マグネシウムホイールは前後輪でわずか6kg(13.23lbs)。MotoGPのマシンが採用している4ピストンモノブロックキャリパーは、アルミニウム・リチウム合金のインゴットから削り出す製法によって、1台分の重量を1.5kg(3.31lbs)未満に抑えています。​


ストッピーは、前輪を地面につけたまま後輪を宙に浮かせます。このとき必要なのは速さではありません。速さは技の出来にはむしろ逆効果。スタントマンに聞けば時速40~60キロ(25~35mph)でも大丈夫と全員が答えるでしょう。​


最近2シーズンで回数が最も多かったのは、プチェッティ・カワサキでデビューし、現在はヤマハに所属するトプラク・ラズガットリオグルです。彼のマシンコントロールは明らかに群を抜いていて、マシンを前輪で90度に直立する妙技を何度も披露しています。​


彼の場合、たいていはギアを2速にしてピットレーンに時速80キロ(50mph)で進入します。そして前輪に1.2~1.4MPa(174~203psi)の圧力を加えます。後輪が浮き上がったら圧力を0.2~0.3MPa(29~43psi)まで緩め、バランスを保ちます。その後、ギアを1速に落とし、後輪にブレーキをかけて着地します。​


プラマックのジャック・ミラーもストッピーを始め、2020年2月のセパンでのテスト日に、ドゥカティ・デスモセディチで披露。翌年1月のヘレスのテストでは、ステファン・ブラドルもホンダR213Vで技を見せました。ルーカス・マヒアスもカワサキ・ニンジャZX-10RRで加わっています。彼ら3人には共通点が1つ。それはブレーキディスク、キャリパー、ブレーキパッド、マスターシリンダーを含むブレーキシステムが、全員ブレンボ製だということです。​


この事実からも、ブレンボのブレーキパーツの性能と信頼性が、世界中のトップ選手からいかに頼りにされているかがわかります。MotoGP、Moto2、Moto3、そしてMotoEの全選手に加え、SBKの大半の選手までもが皆ブレンボ製ブレーキシステムを使用しているのは、単なる偶然ではありません。​



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ストッピーでは、後輪は無視して前輪にだけ強いブレーキをかけます。体位も重要で、まず、ひじは固定しないこと。一方でひざは内側にぐっと寄せて、燃料タンクを締め付けるように力を入れます。​


コンマ数秒後には、転倒しないよう徐々にフロントブレーキを緩めていく必要があります。この間、後輪は浮いていて、下がり始めるまではリアブレーキを使用してはいけません。​ 


ストッピーの早い段階でリアブレーキを操作してしまうと、後輪が回転を妨げられたことでマシンとライダーのバランスが崩れます。また、不自然な体勢で身体を前のめりにするのも間違いです。マシンとライダーを一体としたときの重心がずれてしまうからです。​



 

SBKの選手がストッピーをする際は、ブレーキレバーには、マシンのマスターシリンダーの径によって7.2kg(15.88lbs)または6.5kg(14.33lbs)の力を加えます。これに対し、例えばカタールGPの1,068m(1,168ヤード)のストレートエンドで第1コーナーに進入する際の力は6.1kg(13.45lbs)です。​

 

お気づきかと思いますが、低速でのブレーキなので高いエネルギー量は必要ありません。ただしブレーキトルクは高い方が有利です。トルクの値はブレーキディスクの有効半径、摩擦係数、そしてキャリパーの締め付け力に正比例します。​


当然、マスターシリンダーは高レスポンスかつ調整が効くものであることが必須です。ブレンボには流体力学や動力学、人間工学が関わるパーツの設計経験が豊富なため、ブレンボ製マスターシリンダーは、加えた力を直線的に制動力に転換できるのが特徴です。​

 

いずれにせよ、ストッピーはピットレーンで行われるため、レースマシンのブレーキシステムにマイナスの影響は及ぼしません。ピット上での低速はブレーキパッドとブレーキフルードの温度はかなり低いので、ブレーキシステムが熱ストレスの危険にさらされることはありません。​


ただ、こうしたおふざけには各チームのマネジャーたちが眉をひそめています。クランクケース内のオイルの流動を心配する声もありますが、機械部品が壊れる危険を理由に難色を示す人は多くはいません。転倒したり、無駄な怪我を負ったり、マシンの一部を壊したりする危険、そして単に、ふざける姿を数多くのカメラにさらすことに対して心配しているのです。​


二輪で行う曲乗りのうちストッピーが最も危険だとされているのは、決して意外な話ではありません。行なっている間は動きの見通しがきかないからです。ですので、公道でもサーキットでも皆さんにストッピーはあまりお勧めできません。​

 

 


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