2022 MotoGPに挑む新たなブレンボ製ブレーキシステム

2022/03/15

 MotoGP全選手へのブレーキシステムの供給は7年連続へ ― 今シーズンは選手別のカスタマイズ仕様。 Moto2とMoto3でもブレーキサプライヤートップとしての地位を強化。

​ブレンボは、来たる2022 MotoGP世界選手権に参戦する全24選手に向けて、カスタマイズ可能なブレーキシステムを構築しました。 ここに至るまでブレンボブレーキは数々の勝利に貢献し続け、ライダーズチャンピオンは33回、コンストラクターズチャンピオンは34回を数え、有力チームの優勝は500回を超えます。 


今季も、参戦12チームが引き続きブレンボならではの性能・信頼性・安全性を高く評価して採用を決めており、ブレーキキャリパー、カーボンディスク、ブレーキマスターシリンダー、クラッチマスターシリンダー、ブレーキパッドなどを使用する予定です。 2022シーズン用にブレンボが開発した今回のブレーキシステムでは、各選手が自分のライディングスタイルのほか、サーキットやレース戦略にも最適にセッティングできる様、カスタマイズが可能になっています。




 

GP4キャリパー​


選手の大半が継続して選択したのは、ブレンボが2020年に開発したGP4キャリパー。 アルミニウムのインゴットからの削り出し製法によるモノブロック設計の新型ラジアルマウント4ピストンアルミニウムキャリパーです。 登場した当初からMotoGPのほとんどの選手が選択していますが、2019年バージョンを好む選手も何名かいます。


 


GP4では、外側に設けたフィンにアンチドラッグシステムという革新的な機能を組み合わせることで、引きずり抵抗を低減し、制動時のトルク向上を図っています。 この仕組みでは、ブレーキング中に力を発生させ、ピストンに加わるブレーキフルードの油圧を補います。これによりブレーキレバーに実際に加えた圧力以上の効果が得られます。 一方、この仕組みにはスプリングを設けてあり、残留トルクを減らすともにブレーキパッドとディスクとの接触を防ぎます。 ​​ 


 

カーボンディスクは12種類​


ブレンボから12種類のブレーキディスクを供給します。 外径は6種類、それぞれにハイマスタイプとスタンダードマスタイプの2種類があり、合計12種類です。 ハイマスとスタンダードマスとで分かれるものの、選手の大半がDIA340mmを選択する見込みです。一方、DIA320mmのハイマスとスタンダードマスの両方を引き続き併用するチームもあるようです。 今回のカーボンディスクでは、新たにDIA355mmベンチレーテッドカーボンディスクを加えました。このディスクはセパンとマンダリカでのテストを経たもので、今シーズンの初戦から使用可能です。最大の特徴は高度に制御されたベンチレーションで、ヒートエクスチェンジを促進してディスクの冷却性を保ちます。シュピールベルクやもてぎ、セパン、ブリラムといった、ブレーキにとって非常に過酷なサーキットに臨むマシン用に開発されたディスクです。


 


素材であるカーボンの成分には3つの特長があります。 バネ下重量を減らせること、スタートからゴールまで摩擦係数が維持されること、そしてスチール製ディスクにつきものの残留トルクが発生しないことです。 


DIA340mmのベンチレーテッドディスクも使用可能です。これは2021年のオーストリアで初めて使用され、ブレンボのカーボンディスクで標準とベンチレーテッドの両タイプが揃っている、唯一のディスクとなっています。 ​


 

ブレーキフィーリング​


ブレンボでは、選手ごとにマシンに合ったマスターシリンダーを選べるようにしたため、ブレーキレバーの「応答性」を各選手の走り方に適合させることが可能です。また、各マシンには左手で操作するリモートアジャスターが搭載され、走行中でもブレーキレバーのポジション変更が可能です。


ブレンボが確認したところ、サムマスターシリンダーを日頃から使っているMotoGP選手は3分の1以上にのぼります。初採用は1990年代のミック・ドゥーハンで、左側のセミハンドルバーのレバーを使ってリアブレーキを操作します。2022シーズンでは2種類を用意しました。ひとつは最も一般的に使われている方法で、サムマスターシリンダーとペダルによる1系統のブレーキラインで、リア2ピストンキャリパーを使用します。もうひとつは、ブレーキラインを2系統に分け2ピストンもしくは4ピストンのキャリパーを動かします。前者は1系統のみ使用でき、後者は同時使用が可能です。 伝統あるこのサムマスターシリンダーには他にも押して引くタイプがあります。初採用は2019年、現在では効率が最も上がるよう最適化が図られています。2つの機能が一体化されており、親指でも人差し指でも操作できます。人差し指で操作する場合は、ブレーキレバーのマスターシリンダーの位置が、親指で操作する場合と180度変わります。減速する際のブレーキレバーの握り加減と効きの微調整がしやすくなります。


 

 

​マルケジーニホイール​


2022シーズンでは、12チーム中8チームがマルケジーニの鍛造マグネシウムホイールを使用します。 前輪にはY字型スポーク5本または7本、後輪にはスポーク7本のマルケジーニホイールが使われます。ブレンボのグループ会社・マルケジーニが作るホイールは、軽量性に優れており、加速時や方向転換時、そして最も危険であるコーナー手前のブレーキ操作時、深い角度(最大60度)のバンク走行時、出口のフルスロットル時、マシンを傾けた時に、その軽さが有利に働きます。


 

 


SBSフリクションとホタ・ホアンの両ブランドを通じたブレンボのMoto2とMoto3参戦が決定​


ヘレスとポルティマオでのテストを経て、ブレンボはMoto2クラスとMoto3クラスのブレーキシステムのトップサプライヤーとなることが確定しました。 Moto2の全15チーム、Moto3の全15チームがブレンボ製のキャリパーを選択。他のパーツでは、ブレンボのスチール製ブレーキディスクを選んだのが約50%、同じくブレンボのブレーキパッドが80%、マスターシリンダーが90%、ホイールはブレンボのグループ会社のマルケジーニ製が50%弱となっています。


 

最近ブレンボグループが買収したSBSフリクションとホタ・ホアンの両社も、Moto2とMoto3の数チームに供給を行っています。SBSフリクションはバイク、スクーター、ATV/UTV、乗用車、産業分野を対象とするアフターマーケット用ブレーキパッドと摩擦材の開発・製造・販売を手がけるトップ企業です。ホタ・ホアンはバイク用の金属メッシュブレーキホースをはじめブレーキシステムパーツの開発・製造で業界を牽引しています。