2021:ブレンボが選んだ制動力トップ15車種

2021/10/01

 ランキング中、全体の87%にあたる13車種がブレンボ製ブレーキ搭載車

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世界中で大人気の公道仕様車は、価格や最高速度、0 - 100km/h (62.1mph)加速など、ほとんどの情報が公開されています。その一方で、あまり知られていないのが制動距離。違いが交通安全や軌道性能にはっきりと出る重要な要素です。​


カーマニアにとって世界的なバイブルのひとつである、ドイツの有名な自動車雑誌『auto motor und sport​』では、技術者らが試乗を行っており、その際、ありがたいことに制動距離も必ず計測しています。そのデータを利用して「時速100キロ(時速62.1マイル)からどれだけの制動距離で完全停車できるか?」を示すランキングが作成できます。​


試乗テストは日を変えて複数回行われました。各車両2名が乗車し、急ブレーキを9回行ってブレーキを過熱させた後、10回目を計測の対象としました。仕上がりとしては、完全停車まで31.7メートル(104フィート)未満が15車種も名を連ねたランキングができました。​


ブレーキ性能を左右するのはキャリパーやブレーキディスク、マスターシリンダーだけではありません。搭載するブレーキシステムが全く同じ場合は、車重や空力性能、もちろんタイヤも結果に加味されます。​


ランキング中、全体の87%にあたる13車種がブレンボ製ブレーキ搭載車​



 

他にもお伝えしておきたいことがあります。auto motor und sport誌のランキングは50車種ですが、その中には類似の車種があるということ。例えば、ポルシェ911は5車種もあり、フェラーリ488は6位までに2車種が入っています。本コラムのランキングでは、繰り返しを避けるため同じ車種はひとまとめにし、分析の対象を15車種までとしました。​


もうひとつ付け加えるならば、ランキングでタイ、つまり制動距離が同じだった場合は、重量の重い方を上位と判断しています。なぜなら、100km/h (62mph) - 0の制動距離が複数の車種で同じだった場合は、重い車種の方がブレーキシステムにかかるストレスが大きいと想定できるからです。​


前置きがすっかり長くなりました。さっそくトップ15の顔ぶれをご紹介しましょう。​


 


15位:パガーニ・ゾンダF​​

100km/h (62.1mph) – 0に31.6メートル(103.7フィート)​

 

オラチオ・パガーニと、F1世界チャンピオンの座を5回獲得したファン・マヌエル・ファンジオの哲学を反映して誕生したゾンダF。軽量と性能、匠の技とテクノロジーが融合しています。メルセデスAMG製の7.2リッター12気筒エンジンが繰り出す602馬力で最高時速345キロ(時速214マイル)を達成。ボディーとルーフにカーボンファイバーを使用して装備重量を1,230kg(2,711.7ポンド)に抑えています。​


ゾンダとは、アルゼンチンの大草原パンパに吹く乾いた高温の風。その名とは逆に、ブレーキの空冷は常に良好。これを可能にしているのが380ミリ(15インチ)径のカーボンセラミックブレーキディスク、そしてフロントの6ピストンワンピースキャリパーとリアの4ピストンキャリパーで、すべてがブレンボ製です。性能も抜群に高く、ゾンダFの200kmh (124.3mph) - 0にわずか4.4秒しか要しません。


 

14位:レクサスLFA​

100km/h (62.1mph) – 0に31.6メートル(103.7フィート)​

 

2010年の生産開始時、限定数の500台がわずか数週間で完売したLFA。ボディーの大半にカーボンファイバー強化プラスチックを採用して排気量は4.8リッターながら560馬力を実現するV10エンジンなど、画期的な特徴が今も印象に残る名車です。​


レクサスが求めたのはエンジンに見合う高効率の制動力でした。そのため、ブレンボの390ミリ(15.3インチ)径ブレーキディスクをフロントに、360ミリ(14インチ)径をリアに配する高性能カーボンセラミックブレーキシステムを選択しました。それぞれに6ピストンと4ピストンのワンピースキャリパーを組み合わせて、より軽量で摩耗に強く、性能が長続きするシステムに仕上がっています。デイトナ24時間レースを5度制覇したスコット・プルエットがテストドライバーに同乗する形で初めて走りを体験した際には「ブレーキを踏むのがあまりに遅くて、コースアウトするかと思った。」と驚いたそうです。​


 

13位:アウディTT RS

100km/h (62.1mph) – 0 に31.5メートル(103.3フィート)​

 

2019年のジュネーブモーターショーで初公開されたTT RSは、前モデルとは全く異なるデザインが特徴。2.5リッター直列5気筒ガソリンエンジンで400馬力と最大トルク480Nmを出力します。装備重量は1,550kg(1.71ショートトン)、0 - 100km/h (62mph)加速は3.7秒です。​


十分な制動力を確保するためにアウディが採用したのは、鋳鉄製ブレーキディスクでした。フロントに370ミリ(14.6インチ)径、リアに210ミリ(8.27インチ)径を使用し、キャリパーはアルミニウム製のワンピースタイプの6ピストンと4ピストンをそれぞれに組み合わせています。また、TT RSでは、重量を100kg(220.5ポンド)減らしたことで、前回のランキングでアウディの中で最高位だったRS4よりも制動距離が1メートル(3.29フィート)短くなりました​


 

12位:ポルシェ918スパイダー​

100km/h (62.1mph) – 0に31.4メートル(103フィート)​


 

918スパイダーは発売前に、ニュルブルクリンクのうち開設の古いノルトシュライフェ(北コース)で、ラップ長20.6km(12.8マイル)を6分57秒で周回し、公道仕様車で初めて7分を切りました。V8エンジンに加えて電動モーター2基を搭載した合計887馬力のハイパワーがなせる偉業です。​ 


これほどの高出力では、制御の維持の要求に対して一切の妥協はできません。ラボと公道で何度もテストした結果、ポルシェが選択したのは、フロントに410ミリ(16.1インチ)径カーボンセラミックブレーキディスクと6ピストン固定キャリパー、リアに390ミリ(15.4インチ)径カーボンセラミックブレーキディスクと4ピストン固定キャリパーでした。モノブロックキャリパーとカーボンファイバーディスク、圧勝の組み合わせです。​


 

11位:KTM X-BOW GT​

100km/h (62.1mph) – 0に31.3メートル(102.7フィート)​​​

 

X-Bowは世界で初めてモノコック構造にカーボンファイバーフレームを採用し、空重量で847kg(1,867.3ポンド)という驚くべき軽さを実現しました。これほど軽量なうえに重心が39センチ(15.4インチ)と低いため、高性能の発揮に膨大なパワーを要しません。2リッターエンジンで420Nmトルクを発生します。​


サーキットであろうと、カーブ続きの山道であろうと走りの快適さを損なわないためには、ブレーキシステムのレスポンスが肝心です。選ばれたのはブレンボの固定キャリパー。フロントに4ピストン、リアに2ピストンを使用し、ディスクはベンチレーテッドタイプの305ミリ(12インチ)径と262ミリ(10.3インチ)径をそれぞれに組み合わせています。ペダルのレスポンスを高め、温度管理にも配慮した構成です。​