F1 vs フォーミュラEのブレーキ対決:勝負のカギはパワーにあらず

2019/07/12

F1とフォーミュラEそれぞれに供給しているブレンボのブレーキシステム、もしも逆ならどうなる?今より有利になるのはどっち?

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モータースポーツのレースが話題になるとき、「それ以上」の方が「有利」だという考えが往々にしてあります。エンジンはパワフルな方が望ましいし、タイヤ幅だって太い方がいい。でもブレーキシステムに関してはそうとも限りません。最大パワーというのは、パーフェクトブレーキングを決定づける要因の一つにすぎないからです。​

​それをわかっていただくために思いついたのが、現実にはありえないこの交換という話。ブレンボがF1とフォーミュラEそれぞれに供給しているブレーキシステムがもしも逆だったら、いったいどうなるでしょう?つまり、現在フォーミュラEで使用中のブレーキシステムをそのまま今シーズンのF1マシンで使用したらどうなるのか、ということです。​


 


 

構造の違い​

実際は両者のシステムには大きな違いがあります。F1マシンが使用するブレーキディスクは、フロント32mm厚、リア28mm厚で、パッドはフロント22mm厚、リア17mm厚です。ディスクのベンチレーションホールは1ホールの直径が2.5mmで、個数は多いもので1,480個に達します。​

一方、フォーミュラEでは、摩擦材の摩耗が少ないため、ディスクもパッドもF1ほどの厚さはありません。ブレーキディスクはフロント24mm厚、リア20mm厚、パッドはフロント18mm厚、リア16mm厚です。ディスクのベンチレーションホールの個数はフロント70個、リア90個となっています。​


 

交換の結果​

意外なことに、システムが入れ替わってもどちらのマシンも今より有利にはなりません。実際にはF1もフォーミュラEも、各マシンの特性をもとにそれぞれに最適な設計と重量でブレーキシステムを構成しているからです。​

F1マシンは、最低重量がドライバーを含めて733kg(スタート時は燃料分で約99.8kg増加)と規定されています。一方、フォーミュラEマシンの場合は、バッテリーが車両総重量の43%を占めることもあって、最低重量は899kg。タイヤはF1マシンよりも40%以上細いものを使用します。​


 


 

フォーミュラEのブレーキをF1で使った場合​

フォーミュラEの現在のブレーキシステムをF1マシンで使用した場合、現在ほどの性能は出ません。まず制動距離と時間の点で劣ります。現在のF1マシンは、時速201.2km分減速する場合、ブレーキ操作2秒強、距離110mで達成します。これらの数値は、フォーミュラEのブレーキシステムをF1マシンで使用すると増えてしまいます。​

また、フォーミュラEのブレーキシステムはコンパクトなため過熱しやすくなっています。つまり摩擦材が早く摩耗するということなので、フォーミュラEマシンでは摩擦材をF1よりも短い走行距離に合わせて調整しています。したがって結論としては、F1マシンではタイヤのグリップを最大限に生かした減速ができないうえ、数か所のコーナリングだけですぐにブレーキがダウンしてしまうことになります。​


 

F1のブレーキをフォーミュラEで使った場合​

これと反対に、F1の現在のブレーキシステムをフォーミュラEマシンで使用した場合、機能不全となります。このときのフォーミュラEマシンはとてつもなく巨大なブレーキシステムが積まれた状態です。言い換えると、マシンの特性に必要なレベルを上回る制動力を持ってしまっているので、最低動作温度まで上げるのに苦労するはずです。​

温度が低すぎると、F1マシン用のブレーキディスクとパッドに素材として使われるカーボンは本来の摩擦が安定的に発生せず、制動性能を十分に発揮することができません。そのうえ、低温時は摩擦材にグレージング現象が生じてブレーキ効率が低下する危険もあります。それだけでなく、“冷えた”ブレーキディスクにパッドの機械的な動作が加わることで、機械的摩耗が激しくなります。結果、先ほどの場合と同じです。危険なほどに制動性能が悪化し、摩耗が早まります。​


 

将来の展望​

F1とフォーミュラEのブレーキシステムがこの先どう進化していくかは、現在の差が徐々に縮まっていくという見方も確かにできますが、現時点ではこうなるだろうと言えるものはありません。しかし確実なことは、ブレンボが今後もレースで得るデータを活用して、ドライビングの安全性、快適性、そして楽しさの向上を続けていくということです。これまでF1で行ってきたその取り組みを、今後はフォーミュラEでも行っていきます。​


 

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