1985年、ブレンボはブレーキシステムに革命をもたらすアイデアであるラジアルマスターシリンダーの初の特許を取得しました。このアイデアはまずレーシングの世界で誕生しました。競技バイクのスペースが限られているという問題により、よりコンパクトなソリューションの研究が促されました。

この新しいコンセプトは、ライダーのエルゴノミクスを大幅に改善し、ブレーキレバーを握るライダーの動作をより効果的にすると同時に、システムを小型化しました。


この新しいソリューションの独自性は、力を複数のコンポーネントに分散させることで生じる摩擦損失をなくし、ライダーの手による力を直接、同じ方向にピストンに伝える構成にありました。

ラジアルデザインは、ピストンの軸をレバーの引き方向と平行にし、ハンドルバーに対して垂直にします。

このアプローチの多くの利点の1つは、ブレーキマスターシリンダーを設計して油圧比と機械比を最適化することで製品の性能を改善できることでした。

1986年、ラジアルマスターシリンダーは、Motorcycle Grand Prixのそのシーズンの500 ccクラスで勝利した有名なGPレーサーであるエディ・ローソンのヤマハYZR OWに搭載され、すでにサーキットで実績がありました。

エディ・ローソンは、この新しいコンポーネントの極めてリニアなレスポンスにすぐに感銘を受け、ブレンボに、新しいソリューションによって明らかになったいくつかの欠点を解決するために、このアイデアをさらに発展させるよう伝えました。

​最初のコンセプトをさらに進化させた2つのソリューションが1988年に特許を取得し、その結果、現在のものにかなり近いラジアルマスターシリンダーが誕生しました。
そこからわずか4年、2002年には、量産オートバイのアプリリアRSV 1000に初のラジアルマスターシリンダーが搭載されました。2007年にブレンボは、革新的な技術をふんだんに盛り込んだ新しい19RCSブレンボブレーキマスターシリンダーを発表しました。

このラジアルマスターシリンダーは、またも世界初となりました。この製品はブレンボが特許を取得し、MotoGPから派生したものであり、非常に厳格なライダーでも個別の状況に対応できるようにマスターシリンダーの性能を設定できる革新的な調整システムが特徴です。


それまでは、アフターマーケットブレーキマスターシリンダーの選択肢は2つしかなく、ライダーはレーシング製品か道路使用用コンポーネントから選択せざるを得ませんでした。

バイクを主に道路で使用するライダーは通常、よりソフトかつ前身的な制動動作と、理想的ではない路面状況でもスムーズなレスポンスを実現する19x20の公道使用可能なマスターシリンダーを選んでいました。

一方、サーキットでラップタイムを数百分の一秒単位で縮める興奮を求めるライダーは、レバーを握るとすぐに強力な制動力を発揮する19×18レーシングマスターシリンダーを選びます。

目安として、19x18マスターシリンダーは、直径32/36、34/34、および30/34の4つのピストンを備えたキャリパーを搭載したバイクに推奨され、19x20マスターシリンダーはその他のキャリパーに適しています。

ブレンボは、ドライバーを回すだけでライダーが構成を切り替えられる1つの製品によって、一見相容れないように見えるこの2つの選択肢を統合することに成功しました。

19RCSブレンボラジアルブレーキマスターシリンダーのRCS(レシオ・クリックシステム)システムは、マスターシリンダーの基本的な特性を変える前例のない機能を導入しており、ライダーはバイクのフィールを個人の好みに合わせて完璧に調整できます。

このシステムにより、ライダーはブレーキレバーのレバレッジを調整し、乾燥した路面や濡れた路面、グリップの弱い舗装路やグリップの強い舗装路など、さまざまな状況やライディングスタイルに合わせてブレーキシステムの特性を調整できます。

19mmマスターシリンダーは、デュアルブレーキディスクを搭載したすべてのオートバイに対応しており、2種類のブレーキマスターシリンダーから選択できるという利点があります。19x18mmユニットは、レバートラベルがわずかに長くなりますがより漸進的に制御可能な制動力が得られ、19x20mmユニットはライダーにストリートバイクブレーキレバーのフィールを与えます。


この2in1マスターシリンダーの革新的な特性により、ライダーはドライバーでガイドレバー前面のアジャスターネジを180°回すだけで支点からピストン間距離を18mmまたは20mmから瞬時に選択できます。このシステムは、支点とマスターシリンダープッシュロッドとの接点間の距離を2ミリメートル調整するカム(18mmに設定した場合は赤、20mmに設定した場合は黒)を使用しています。これにより、純粋な出力面ではシステムの性能を変えることなく、制動力の配分を変えることができます。

ブレンボ19RCSに、新型ブレンボ19RCSコルサコルタブレーキマスターシリンダーが加わりました。この製品がオートバイの愛好家の新たなベンチマークとなることは間違いありません。