アントニオ・カイローリ:軽業師
モトクロスに関してお伝えする機会があまり多くないため、ブレンボのブレーキの良さはアスファルトだけだと思い込まれているかもしれませんが、実際は、四輪、二輪のレース用と同様にオフロードレース用のブレーキも四輪用、二輪用ともに製造しています。近年はダカール・ラリー、バハ1000、WRCで数々の優勝に貢献しています。
そこで今回ご紹介するのがアントニオ・カイローリです。2010年にKTMに所属したカイローリは、ブレンボのブレーキを使用して、MX1で4回、MXGPで2回、ワールドタイトルを獲得しています。グリップの低いラフな路面ではパワーよりもブレーキを調整していかにマシンをコントロールするかが勝利を左右します。そのためカイローリは前輪に24mm径2ピストンのフローティングキャリパー1個を使用しています。
操作性が高く頑丈でコンパクトな9mm径ピストンのタンク一体型アキシャルブレーキポンプを前輪に使用しています。後輪には26mmピストンのモノブロックキャリパーに13mmのポンプを組み合わせています。これらを使いこなすことで、急カーブもマシンを不必要に滑らすことなくスムーズに抜けるカイローリは、まさに軽業師です。

( トニー · カイローリが使用したBrembo製オフロードレーシングキャリパー)
アントニオ・カイロ―リvsバレンティーノ・ロッシ : ブレンボ製ブレーキの相違点と共
9回ものワールドタイトル獲得なんて、決して偶然ではありえません。モトクロス世界選手権とMotoGP、両方のカテゴリー制覇に向けてブレンボが練るブレーキ設計の戦略をご紹介します。