1999年、ケニー・ロバーツJr.がスズキのRGVを駆って4勝をあげ、500ccクラス2位でシーズンを終えた好戦績にも、このラジアルマウントキャリパーが貢献しています。翌2000年にも彼は4勝と表彰台5回の快進撃を続け、シーズン終了まで2戦を残す段階で早々と世界タイトル獲得を決めています。
時を経て、ブレンボのラジアルマウントキャリパーは、500ccクラスからMotoGPに至るまで、優れたレスポンスと最高の制動力を求める選手たちにとって標準パーツとなりました。
しかし、ほどなくしてレース仕様から公道仕様として量産が始まることになります。ブレンボの技術者はキャリパーのサイズダウンを選択し、中心距離も100mm(3.9インチ)に減らしました。それ以来、100mmがヨーロッパの公道バイク用ラジアルマウントキャリパーの標準取り付け寸法となっています。 一方、日本ではスーパースポーツ車の公道仕様とレース仕様との間で取り付け方は変えないでおくべきとの意向から、108mmのマウントピッチが維持され、日本製のほとんどのスポーツバイクにおける標準取り付け寸法として定着しています。
こうした経緯があり、2017年末にブレンボがStylemaキャリパーを発表した際にはヨーロッパのメーカー向けには中心距離100mmのStylemaを供給し、別途108mmバージョンをスズキのハヤブサ専用に開発した為、ハヤブサが世界初の108mmバージョン搭載マシンとなったのです。 そして、ほんの偶然でそうなったものの、初めてハヤブサを生み出したスズキと、初めてラジアルマウントキャリパーを生み出したブレンボが、1999年からぐるりと一周して元に戻った、そんな印象を抱かずにいられません。