シューマッハvsベッテル:ブレンボによるブレーキングの比較

2016/03/15

 シューマッハvsベッテル:2人のブレーキの使い方とセッティングに見られる数多くの類似点

​世界に冠たるドイツ。この四半世紀でF1チャンピオンを最も多く輩出した国です。1990年から現在までで、ドイツ人ドライバーの優勝は153回。続いてイギリス人が114回、ブラジル人が56回です。


 

ドイツの優勝数の大半は、ミハエル・シューマッハとセバスチャン・ベッテルによるもので、シューマッハが91回、ベッテルが42回。そのすべてがブレンボ製ブレーキ搭載マシンでの優勝です。単なる偶然と思うならそれは大きな間違いです。

 

 
 

シューマッハもベッテルも、どちらも非常に洗練されたドライビングテクニックと、サーキット上でめったにミスをしない冷静な頭脳の持ち主であるうえに、二人とも、マシンのセッティングによる挙動の違いを人一倍鋭敏に見極めることができます。もちろんブレーキの組み合わせにも敏感です。私たちは彼らのことを技術部副部長と呼びたくなるほどでした。技術的な選択肢のアドバイスや、さらにはマシンの開発の話もできる、技術部ディレクターにとってまさに助っ人です。

 シューマッハがベネトンに在籍していた当時からフェラーリへの移籍後、ずっとサポートしてきたブレンボの技術者によれば、シューマッハはメンタルを整えておく能力が非常に高いドライバーだそうです。本人がブレンボのブレーキシステムに望んでいたのは、どんなレースでもコンスタントに自分の意のままに動き、最後まで性能が持続するブレーキでした。


 

​同じことはベッテルにも言える、と分析するのは、トロ・ロッソからフェラーリに移籍、そしてレッドブルで4シーズン連続ワールドチャンピオンに輝いたベッテルを見続けてきたブレンボの技術者です。彼らによれば、ベッテルは、マシンの開発に大きく貢献してくれる、まさに「リトル・シューマッハ」。そのうえ、摩擦材のわずかな違いも感じ取る鋭敏な感覚を持ち合わせていて、性能が僅差でも素材がカーボンかそれ以外かを区別できるドライバーは、現在のF1シーンでは唯一ベッテルだけだそうです。


 

祝うべきF1参戦40周年を迎えたブレンボ。技術者たちは、シューマッハとベッテルはどちらも反応の非常に鋭いブレーキペダルが好みという点で似ていると言います。二人とも体格は大柄ではありませんが、踏み込みが非常に強いことでは有名です。
         
シューマッハとベッテルは、予選でブレーキシステムの性能を試す際のアプローチも同じです。予選の最終ラウンド、最後のラップ計測に臨む際に、二人はマシンのブレーキをブレンボの新品のセットに変えます。ディスクの摩擦力を高くしてライバルとの争いで溝を刻むのです。シューマッハがポールポジションを68回、一方ベッテルがすでに46回、いずれもブレンボのブレーキで獲得しているのは、偶然の産物ではありません。

 

 

ブレンボの研究はとどまることがないため、ブレーキシステムの技術仕様は間違いなく変わっていきます。2006年、シューマッハが最後に優勝した年に100個だったディスクのベンチレーション・ホールは、今や1200個を超え、当初のものより細かくなっています。ブレーキパッドの素材も進化していますが、これについては別の機会にご紹介します。