TTサーキット・アッセンは第1コーナー(Haarbocht)がブレーキの最難関

2017/06/22

 二輪の世界で繰り広げられるビニャーレス、ロッシ、ドヴィツィオーゾ、マルケスの熱い戦い クラッシュのリスクに挑む果敢な走りをブレンボ製ブレーキシステムがサポート

マン島TTレースから3週間。MotoGPが目前に控えるツーリストトロフィー争奪戦といえば、もちろんTTサーキット・アッセンが舞台です。

オランダにあるこのサーキットは、ロードレース世界選手権の創設以来開催が続いている唯一のサーキットで、ここでMotoGP 2017第8戦となるオランダGP(ダッチTT)が6月23日~25日に行われます。


 

TTサーキット・アッセンは、1925年の開設以降レイアウトや全長の改修を何度も繰り返したサーキットです。1992年には、マイケル・ドゥーハンがホンダのマシンで予選走行中に転倒して負傷し、あわや右足切断の危機にさらされる事故がありました。

脚の怪我はコスタ医師の治療で回復しましたが、復帰後のドゥーハンの優勝には、ブレンボの技術者らがドゥーハン専用に開発した、ペダルの代わりに親指のレバーでリアブレーキを操作する新方式のマスターシリンダーが大きく貢献しました。 TTサーキット・アッセンにはコーナーが18か所ありますが、そのうちタイトなものは1か所のみで、その他は高速コーナーが中心の走行しやすいコースです。

他の開催地と比べて減速度が低いことも特徴です。最高速度は時速320キロ以下、また高速で通過するコーナーが多いため、ブレーキの冷却にはとくに支障はありません。 コースレイアウトにはほとんど問題はありませんが、唯一の不安材料は天候です。2014年、スタート時は雨天だったためスチール製のブレーキディスクで各マシンがスタートしたものの、レースの中盤で雨がやみ、多くのチームがカーボンブレーキディスクに変えました。

ところがディスクの温度上昇が不十分だったため、交換直後の数か所のブレーキングポイントでパフォーマンスが上がらず、一部のライダーからは不満の声も聞かれました。

2017年のMotoGPに参戦する全ライダーをサポートしているブレンボの技術者らは、TTサーキット・アッセンをブレーキの難易度が低いサーキットと分析しています。難易度指数は1~5のうち2で、これを下回るサーキットはフィリップアイランドのみです。

 

 
 

レース中のブレーキの使い方

18か所あるコーナーのうち、ブレーキ操作を要するのは10か所です。そのうち1か所はブレーキ区間が160メートルを超えます。

ブレーキの操作時間は1ラップ平均24秒間、ちなみにスーパーバイクでは26秒間です。

レース全体で合計するとMotoGPの場合10.5分間で、レースの総時間の26%にあたります。

減速度のピーク平均は、MotoGPでは1.15G。これに対し、スチール製ブレーキディスクを使用するスーパーバイクでは1.08Gです。

ブレーキレバーに加える力をスタートからゴールまでで合計すると、ライダー1名あたり1,100kgで、スーパーバイクの場合と比べて300kgも上回ります。

1ラップに換算すれば42kgですが、体調がベストでなければ決して楽な負荷ではありません。


 

ブレーキングの最難関

TTサーキット・アッセンにある10か所のブレーキ区間のうち、最難関は1か所、難易度中が2か所で、残りの7か所はすべて難易度低です。 最もハードなブレーキ操作を要するのは、下りながら右に曲がる第1コーナー(Haarbochtカーブ)です。

時速291キロでアプローチし、ブレーキを3.8秒間操作します。この間の走行距離は213メートル。チューリップ2000本分の畑と同じ長さです。ブレーキレバーに6.1kgの力を加えて時速111キロまで大幅に減速するため、ライダーの体には1.5Gがかかります。

ブレンボHTC 64Tブレーキフルードの圧力も1.06MPaまで上昇します。 第9コーナー(De Bult)では、3.1秒間のブレーキ操作で時速242キロからで時速112キロまで減速します。この間の走行距離は130メートル。ブレーキレバーの操作は5.7kgの力を要します。最大減速度も、ブガッティ・ヴェイロンを0.1G上回る1.4Gに達します。

アプローチスピードが時速300キロを超える唯一のブレーキングポイントが第6コーナー(Ruskenhoek)です。

ここは1.6秒間のブレーキ操作で時速236キロまで減速してクリアします。このときブレーキレバーに加える力は約2.6kg、ブレーキフルードの圧力は0.46MPa未満です。

 

 

ブレンボの戦績

TTサーキット・アッセンでは、ブレンボ製ブレーキ搭載マシンの優勝は500cc時代に27回、その後現在までで23連勝中です。1979年にはバージニオ・フェラーリが乗るスズキに提供して、プレミアクラスで2度目の優勝を果たしました。バレンティーノ・ロッシはMotoGPの500ccクラスでダッチTTを7回制覇していますが、そのうち直近の5回はいずれも奇数年です。ドゥカティでの優勝は、2008年のケーシー・ストーナーによる1回にとどまっています。