Formula 1 2016: ブレンボが分析するF1アブダビGP

2016/11/23

 ヤス・マリーナ・サーキットでのF1のブレーキングを詳細解析

2016 F1第21戦が、11月25日~27日にヤス・マリーナ・サーキットで開催されます。 このサーキットは、アラブ首長国連邦の首都アブダビの北西部に位置する広さ25平方キロメートルの人工島、ヤス島にあります。設計を手がけたのはヘルマン・ティルケで、開設は2009年の10月30日。以来毎年F1アブダビGPを開催しています。レースは日がまだ高いうちにスタートし、ゴールの頃には照明が灯ります。

コース上に13か所あるブレーキングポイントは決して楽ではなく、周回スピードも速いうえ(予選ラップの平均速度は時速200キロ)、猛暑という気候条件が加わります。これらの要因が路面のグリップを上げブレーキの負荷を増やすため、熱交換と摩擦材の消耗に関するトラブルが起こるおそれがあります。

21か所あるF1の開催地をブレーキの難易度に関して1~10段階で格付けしたブレンボの技術者によると、ヤス・マリーナ・サーキットは最高ランクに属するサーキットです。難易度指数はモントリオールと同じ最高点10をつけています。

この2つのサーキットが同じ難易度とはいささか意外です。なぜなら両者は緯度の違いにはじまり(アブダビは24度、モントリオールは45度)、全長もコースレイアウトも平均スピードも全く異なるからです。それにも関わらず、どちらもブレーキシステムには非常に大きな負荷がかかるサーキットなのです。


 

レース中のブレーキの使い方

1周5,554メートルのうちブレーキングポイントが13か所あるため、ブレーキの使用時間はレース全体の22%を占めます。同じ中東にあるもう1か所のサーキット、バーレーン・インターナショナル・サーキットの値が20%であることを考えると、ずば抜けて高いわけではありません。

平均の減速度は2.9GとF1の開催地の中では最も低いレベルで、モナコ、メキシコシティ、鈴鹿と同程度です。ブレーキ時に放散するエネルギー量は121kWh。これは冷凍庫の1日の電気代28台分に相当します。 スタートからゴールまででブレーキペダルを踏む力の総量は、ドライバー1名あたり69トン。ラクダ115頭分の体重と同じ重量です。


 

Detailed representation of the 2016 Abu Dhabi circuit with curves detail Brembo  

 

最難関のブレーキングポイント

ヤス・マリーナ・サーキットにある13か所のブレーキングポイントのうち、ブレンボの技術者が難易度高と判定したのは2か所、難易度中が4か所、残りの7か所は難易度低です。

最難関をあげるならダントツで第8コーナーです。ここは約1.2キロの長いストレートのエンドにあるため、アプローチのスピードが時速340キロに達し、そこから時速64キロへ一気に落とします。この間のブレーキ操作はわずか1.64秒。そのときドライバーにかかる減速度は5.2G、走行距離は154メートル。これは74階建てのスカイタワーの高さと比べると半分以下です。

第8コーナーでブレーキペダルを踏む力は169kgですが、その3つ先の第11コーナーでも同程度の力(160kg)が必要です。時速329キロから1.60秒間ブレーキを操作して147メートルの距離で時速81キロまで減速します。

距離が100メートルを超えるブレーキングポイントは他に3か所ありますが、どれも減速度は4.4G未満です。難易度が最も低いブレーキングポイントは第13コーナーで、減速幅は時速16キロ、ブレーキ操作は0.72秒間、ブレーキペダルを踏む力は46kgです。


 

 
 

 

ブレンボの優勝数


ブレンボ製ブレーキシステム搭載のF1マシンは、これまで開催された7回のアブダビGPで5回の優勝を果たしています。最多勝ドライバーは3勝をあげているセバスチャン・ベッテルで、いずれもレッドブル時代でした。ベッテルはここで2連勝している唯一のドライバーでもあります。