Formula 1 2016: ブレンボが分析するメキシコGP

2016/10/27

 エルマノス・ロドリゲスでのF1マシンのブレーキングを詳細解析

2016 F1第19戦が、10月28日~30日にエルマノス・ロドリゲス・サーキットで開催されます。

メキシコシティの南東部にあるこのサーキットは、1955年にエンジニアのオスカー・フェルナンデス・ゴメス・ダザが設計を手がけたもので、F1の開催は1963年に始まりました。その10年後、サーキット名が改められ、リカルド・ロドリゲスとペドロ・ロドリゲスのロドリゲス兄弟にちなんで現在の名称になりました。リカルドもペドロもグランプリドライバーですが、二人ともレース中の事故で若くして他界しています。

その後ヘルマン・ティルケがレイアウトを改修し、2015年にF1が再開しました。決勝に向けて路面のグリップが上がるにつれて、路面に放散するブレーキトルクも上昇するため、ディスクとキャリパーの温度には細心の注意が必要です。

F1が開催される21か所のサーキットを、ブレーキの難易度で1~10にランク付けしたブレンボの技術者によると、エルマノス・ロドリゲスは、難易度の高いランクに分類されます。難易度指数で9。これより高い難易度のサーキットは、モントリオールとアブダビしかありません。


 

レース中のブレーキの使い方

コーナーは短い間隔で連続する一方で各セクションに分散もしていて、ブレーキは1ラップで12回使用する必要があります。このため平均周回速度は、昨シーズンの実績で時速193kmにとどまっています。ブレーキ使用時間のレース全体に対する割合も当然大きく、26%とシリーズで最高値となっています。一方、減速度は、コースが曲がりくねっているために極端に高くなることはなく、平均で2.6G。モナコの2.7Gをさらに下回る低い値です。

ブレーキ時に放散するエネルギーの量は、モントリオールとシルバーストーンの値の合計を超える246kWhで、これは一日に1時間メロドラマを観た場合の液晶テレビの年間電気代4台分に相当します。ドライバー1人がスタートからゴールまでにブレーキペダルを踏む力の総量は68トン。アボカド1万7千かご分と同じ重さです。


 

Detailed representation of the 2016 Mexican circuit with curves detail Brembo  

 

最難関のブレーキングポイント

ブレンボの技術者によれば、エルマノス・ロドリゲスに12か所あるブレーキングポイントのうち、難易度が高ランクにあたるコーナーはなく、難易度中が4箇所、残りの8か所はすべて難易度低です。

難易度が最も高いのは、1,200メートルの最長ストレートの先にある第1コーナーです。時速366kmから時速103kmまで、3.29秒間のブレーキ操作で一気に落とします。このときの減速度は4G。走行距離はわずか72メートルで、これはメキシコシティに建設された大型ミリ波望遠鏡の口径の1.5倍に相当する長さです。

第4コーナーもドライバーにとっては難所で、ブレーキペダルを117kgもの力で踏む必要があります。時速327kmから時速89kmへとおよそ時速240km分の減速を、65メートルの距離で行います。逆にブレーキ操作距離が短いのは、第3コーナーと第8コーナーです。第3コーナーはわずか2メートル(0.31秒間)、第8コーナーは5メートル(0.40秒間)です。最も低速のコーナーは、時速79kmで通過する第13コーナーで、ここでは手前25メートルでブレーキを1.61秒間操作して、スピードをおよそ時速100km分落とします。


 

 
 

 

ブレンボの優勝数


ブレンボ製ブレーキ搭載のF1マシンは、メキシコGPでは過去8回の開催で4度優勝していますが、そのうちどのチームもドライバーも2勝以上はしていません。