MotoGPチェコGP、11か所のブレーキングポイントを解説

2017/07/26

 バレンティーノ・ロッシが1996年に自身の初優勝を遂げたブルノ・サーキットへ戻ってきます。初優勝の当時もブレーキはもちろんブレンボでした。

長い夏休みが終わり、MotoGPのマシンは次なる熱戦に向けてエンジンの回転数を上げています。8月4日~6日に開催される第10戦、舞台はチェコのブルノ・サーキット。

かつてのチェコスロバキア共和国の初代大統領トマーシュ・マサリクにちなんでマサリク・サーキットと呼ばれていたこのサーキットは、1987年にコースを改修してブルノ・サーキットとしてオープンし、現在に至っています。

全長は約5.4km。GP開催地では4番目に長いコースです。ストレートは全体に短めで、最も短いもので34.7メートル、最長はホームストレートの635.5メートルです。

コーナーは14か所ありますが(うち8か所が右カーブ)、平均ラップタイムは、時速349.2キロを超えるスピードが出るカタールGPのロサイルとほとんど変わりません。 スタートしてから1.6km~4.8kmの区間に急な勾配があるのが特徴です。

最も低い地点の海抜は約375.8メートルに対し、最高点は海抜約449.9メートルです。マシンの減速は平坦なストレート上で行うのと下り坂のエンドで行うのとでは全く違うため、コースにこうした高低差があることはブレーキには懸念材料です。

もう一つ、ブレーキに関わる不安定要因があります。それは天候です。2014年と2015年は、レース中の路面温度は最高で約22.8°Cでしたが、2006年にはなんと約38.9°Cまで上昇しました。一方、昨年は雨天で約17.8°Cまで下がりました。
ライダーは状況に応じて摩擦材のグレイジングや過熱を避ける走行が求められます。

 

 

2017のMotoGPでは、参戦するライダー全員に対してブレンボの技術者がサポートを行っていますが、彼らはブルノをブレーキの難易度が高いサーキットと分析しています。難易度指数は1~5のうち4で、スペインのヘレスやアラゴンと同じスコアです。


 
 

レース中のブレーキの使い方

ブレーキの操作は1ラップで11回、総時間にすると31秒間です。一見長いように思えますが、これより操作時間が長いサーキットは、ブルノより約965メートルもコースが短いヘレスを含め、実は他に7か所もあります。

ブルノには2秒未満のブレーキ区間が4箇所あるため、総時間数は決して長くはないのです。

減速度が1.4G以上のコーナーがブルノには5か所あるにも関わらず、コース全体の平均減速度は1.15G。

地理的に近いレッドブル・リンクの1.30Gに遠く及びません。
レッドブル・リンクにはブレーキ区間は7か所しかありませんが、そのいずれもが非常に強いブレーキングを必要とします。

ブレーキレバーを引く力をスタートからゴールまで合計すると、ライダー1名あたり11.2トンを超えます。

1ラップでは約11.3kgでヘレスと同程度です。


 

最難関のブレーキングポイント

ブルノの11か所のブレーキングポイントのうち、難易度が高ランクと分類されるのは1か所のみで、6箇所が難易度中、残りの4箇所が難易度低です。 難易度が突出しているのは、ケビン・シュワンツの名が付けられた第10コーナー。

長い坂を下ってきたマシンに立ちはだかる難所です。各マシンは時速280キロでアプローチし、4.2秒間ブレーキを操作して時速約99.8キロまで大幅に減速します。

このときブレーキレバーを引く力は約6.2kg、ドライバーの体には1.5Gがかかります。このブレーキングで約210メートル走行する間にブレンボHTC 64Tブレーキフルードは圧力が1.07MPaまで上昇します。

常温時のペプシコーラの缶の4倍に相当する圧力です。 第1コーナーと第3コーナーではブレーキングの走行距離は長くなり、第1コーナーで約225.8メートル、第3コーナーでは約231.3メートルです。

より鋭いブレーキングが必要なのは第1コーナーの方で、操作時間は3.8秒、ブレーキレバーの操作に約5.7kgを要します。

第3コーナーはアップヒルセクションにあるため、減速度は低めの1.4G、ブレーキフルードの圧力は1.0MPaです。

セクター2直後の第9コーナーは、わずか1.2秒間のブレーキ操作で時速約128.7キロから時速約104.6キロへ落としてクリアします。

 

 

ブレンボの戦績

ブルノ・サーキットはバレンティーノ・ロッシが自身初めての優勝を遂げたサーキットとして知られています。1996年8月18日のことでした。ロッシのアプリリアRS125の前輪に装着していたのは、ブレンボのラジアルマウントツーピース4ピストンキャリパーでした。

ディスクもブレンボ製で、ローター面が標準仕様の273mm径カーボンディスクとの組み合わせでした。

ロッシはブルノGPを7回制覇し、7回すべてでブレンボのブレーキシステムを採用しています。マルク・マルケスはブルノでの優勝は2回のみで、直近は2013年にさかのぼります。

グランプリの名称がチェコGPとなった1993年以降、ブレンボ製ブレーキシステム搭載のマシンは500ccとMotoGPの通算で24回のブルノ制覇を果たしています。