2017 F1アゼルバイジャンGPのブレーキングをブレンボが徹底解説

2017/06/22

 バクー・シティ・サーキットは第1コーナーのブレーキングに注目

2017 F1第8戦が、6月23日~25日にバクー・シティ・サーキットで開催されます。昨年はヨーロッパGPとして行われたここでの一戦は、今年から名称がアゼルバイジャンGPと変わり、今回その第1回を迎えます。


 


サーキットはバクーの市街地を利用したコースで、設計をヘルマン・ティルケが手がけています。ホームストレートが2kmと長いため、スタートラインの通過はかなりの速度に達します。

アクセルがメインの高速コースであることは数字上明らかで、全開の区間がレース全体の56%を占めています。実際にここでは昨年ニコ・ロズベルグが時速210キロ超の平均ラップタイムを記録しています。

一方、テクニカルなコーナーも数多く設けられており、特に第8コーナーや第15コーナーでは、目の前に迫る壁への激突を避けるには精度の高いブレーキングが欠かせません。コースの序盤に直角のコーナーが4か所連続しているため、ブレーキシステムに大きな負荷がかかります。その後のコーナーは角度がさまざまで、ドライバーには多彩なブレーキワークが要求されます。

ブレンボの技術者がF1の開催サーキット20か所を1~10の難易度で分類したところ、バクー・シティ・サーキットはブレーキの難易度が高いサーキットで、難易度指数は8となっています。

これと同じランクのサーキットは、バクーから地理的に近いソチをはじめ他に3か所あり、モンツァもそれに含まれます。

 

 

レース中のブレーキの使い方

コースはブレーキングポイントが11か所あるうえ1周が6km超と非常に長いため、ブレーキの使用時間は1ラップあたり約19秒に及びます。これはブレーキの難易度最高ランクのサーキットのひとつであるモントリオールのジル・ヴィルヌーブ・サーキットと比較して7秒上回る長さですが、レース全体に占める割合でみれば、バクーが19%、モントリオールが17%と実際には近似した値になります。

一方、減速度のピークを平均すると4Gにとどまります。これは、バクーには他のサーキットにあるような4.7G~4.8Gレベルのブレーキングポイントがなく、3G以下のコーナーが多いことが理由です。

レース中にブレーキングで放出されるエネルギー量を計算すると、マシン1台あたり171kWh。同じレース時間内に350人のアゼルバイジャン人が消費する電気エネルギーに相当します。こうした値の高さからも、バクーが減速にパワーを要するサーキットであることがわかります。

ブレンボの技術者による試算では、ドライバーがブレーキペダルを踏む力の総量は、スタートからゴールまでで約77.5トン。これはアゼルバイジャン航空宇宙庁によって打ち上げられた人工衛星SPOT 7の重量の100倍に相当します。

 

 
 

最難関のブレーキングポイント 

バクー・シティ・サーキットにある11か所のブレーキングポイントのうち、難易度の高いコーナーは2か所、難易度中が7か所、残りの2か所が難易度低です。

ブレーキシステムにとっての最難関は第3コーナーで、時速319キロのアプローチスピードから、2.28秒間で時速95キロまで大幅に減速します。このときブレーキペダルを踏む力は153kg、ドライバーの体には4.6Gがかかります。走行距離はわずか64メートル。バイルの町のナショナル・フラッグ・スクエアに掲げられた巨大なアゼルバイジャン国旗の横幅にも満たない長さです。

この第3コーナーよりもブレーキペダルを踏む力が若干大きい(154kg)のが第1コーナーです。ただし、ブレーキ操作時間は第3コーナーよりも短い2.03秒間、減速幅も時速325キロから時速122キロと少なく、走行距離も短い57メートルです。

第15コーナーもブレーキ区間は同程度の59メートルで、操作に2.14秒間を要しますが、ドライバーの体にかかるGは4.4G、ブレーキペダルを踏む力は143kgで、いずれも第3コーナーよりは低い値です。


 

ブレンボの戦績

ブレンボ製ブレーキ搭載のF1マシンが今回のような特別なグランプリで果たす優勝として、その35回目の達成がこのアゼルバイジャンGPにかかっています。初回はモナコGPで、以降モナコでは25回の優勝に貢献しています。
ブレンボがF1への供給を開始した1975年以来、ブレンボ製のブレーキシステムは通算370回のGP優勝を果たし、そのうち91回はミハエル・シューマッハによるものです。