フォーミュラ1参戦三十周年を迎える鈴鹿見どころはオーバーテイクの応酬

2017/10/04

 ブレーキの出番がほとんどない日本GP

2017年世界選手権の16戦目、そしてアジア三連戦の最終戦となる日本グランプリが10月6日~8日、鈴鹿国際レーシングコースにて開催されます。フォーミュラ1がこのトラックでデビューしたのは30年前のことですが、ホンダが所有するこのサーキットの歴史は更に古く、鈴鹿サーキットは1962年に開業されました。


 

三重県の同名の市(鈴鹿市)に存在する鈴鹿国際レーシングコースはこれまでに4回の構成変更を行っており、最近では2003年にコース内容が見直されました。2003年の改変では、ドライバーがフルスロットルで突破する130Rコーナー、そしてブレーキングパフォーマンスが見どころとなるシケインのレイアウトがそれぞれ変更されました。

「非常に走りやすい」と言われるトラックがみなそうであるように、鈴鹿では、ほとんどブレーキを操作する必要のないファストコーナーが多く用意されています。ターン8に至っては(ダンロップと同様に)、ブレーキを全く使わず、その他の5箇所のコーナーでも制動距離が約15 mを超えることはありません。

鈴鹿の場合、車速が約201 km/h以上落ちるようなハードなブレーキングが必要となるセクションは非常に限られています。そのため、勝敗の決め手はそのような限られたポイントで最高のパフォーマンスを発揮して首位をキープすることにかかっています。中にはこのセクションで限界を超えたブレーキングを行い、コースから飛び出してしまうドライバーもいます。

世界選手権の20のトラックをそれぞれ1~10までのスケールでランク分けしているブレンボの技術者によれば、鈴鹿国際レーシングコースはその中で最もブレーキに「優しい」コースであるといいます。 鈴鹿の難易度ランクは、4であり、これはシルバーストーンやインテルラゴスと並ぶ評価です。

 

 
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グランプリコースがブレーキにかける負荷

鈴鹿のトラックには18のコーナーが用意され、ドライバーはラップ当たり10回のブレーキングを行いますが、その時間は合計でもわずか13秒間。ターン5では1秒にも満たない短いブレーキングとなります。スタートラインからチェッカーフラッグまでの全体で見ても、ドライバーがブレーキを使用する合計時間はたったの11.5分です。

息をのむようなスリリングなブレーキングセクションがほぼないことから、鈴鹿のラップ当たりの最大減速度の平均値は3.3Gと、世界選手権の中で最低をマークしています。これと類似する数値のサーキットはと言えば、メキシコシティーの3.4Gや、上海の3.5 Gなどが挙げられます。しかしながら、減速度の値が似通っているからといって、そのほかのサーキットの特徴まで類似するわけではありません。例えばメキシコのトラックはブレーキに対してより過酷な構成となっていますし、上海の難易度評価は10段階中6となっています。

激しい減速を必要とするコーナーがほとんどないことから、グランプリコースで放散されるエネルギー量はごくわずか(109 kWh)に留まります。これはシンガポールGPの半分にも満たない値です。それぞれのドライバーがレース中にブレーキペダルにかける力も、中程度の44 MTとなっています。(ただ、「中程度」とはいっても、前回の鈴鹿8耐に出場したすべてのスーパーバイクの重量を足して3倍した値よりは大きいですが。)


 

最も過酷なブレーキングセクション

鈴鹿国際レーシングコースにある10箇所のブレーキングポイントについて、ブレンボの技術者チームがブレーキへの負荷レベルを(難易度高)と評価した箇所は1箇所もありません。4箇所は(難易度中)、そのほかの6箇所は(難易度低)と判定されています。

鈴鹿国際レーシングコースの中で最も難易度の高いポイントはターン16です。このカーブでマシンは約322 km/hのスピードで進入し、たった約65 mのうちに約97 km/hまで減速します。ブレーキを操作する2.71秒の間に、ドライバーは約119 kgの力をペダルにかけて、最大減速度4.4 Gに晒されます。

ブレーキペダルにかかる負荷でいえばデグナーカーブ(ターン9)の方が更に大きい(約123 kg)のですが、コーナーへの進入スピードが約146 km/hでわずか約114 km/h程度の減速のため、ブレーキングのスペース(約34 m)と時間(1.45秒)はともにターン16に及びません。

ターン11のヘアピンでは、ブレーキを2.56秒間、約58 mにわたって使用し、スピードの落差が再び約201 km/h以上となります(約282 km/hから78 km/h)。 しかし、ここではドライバーにかかる物理的ストレスは減速時の3.6 Gに留まり、ブレーキペダルへの負荷も約105 kgと、ターン16ほどは大きくなりません。


 

ブレンボのパフォーマンス
ブレンボのコンポーネントを1個以上搭載したシングルシーターが日本GPで優勝したのは、これまでの32戦中19レースに上ります。更に、この中の7戦の優勝はフェラーリによって勝ち取られました。しかし1976年に開催された富士での最初のグランプリレースでは、ニキ・ラウダの勝利が確実視されていたにもかかわらず、フェラーリはWorld Drivers' Championのタイトルを逃しています。

フェラーリは、鈴鹿での優勝は2004年以降ありませんが、(現在契約中の)セバスチャン・ベッテルはレッドブル所属中に4回の優勝を果たしています。もし彼がもう一勝を飾ることができたなら、これは現在ミハエル・シューマッハただ一人が持つ、ブレンボブレーキを搭載したマシンでの鈴鹿5勝の記録に並ぶことになります。