ブレーキディスクの表面形状(スロット / ホールの形状)とブレーキ性能との関係

2016/06/29

 ブレンボとブレンボ・レーシングでは、ブレーキディスクの適用性や用途、ドライバーの好み、対応車種やシャーシに関する技術要件などに基づいて、おもに4種類の表面パターンのディスクを提供しています。

ブレーキディスクは、プロのレースチームがレース前に自由にセッティングする主要なブレーキチューニングオプションのひとつです。 ブレーキディスクは鋳造の種類や外形に細かなバリエーションを加えることができ、 それらの微妙な違いがブレーキの特性に大きく影響を及ぼします。ディスクの表面形状(スロット / ホールのパターン)もそのひとつで、ブレーキの特性を左右する大きな要因です。


 

おもに以下に影響します。


 

• 初期制動

• コントロール性とモジュレーション性

• リリース

• パッドの摩耗

• ディスクの摩耗


 
Audi R8 LMS con dischi da corsa Brembo 370 mm di tipo 1 nella parte anteriore. Foto: James Boone  

また、ブレーキディスクの表面形状を設計する際には、さまざまな数の要素を検討します。それらの値を変えることで、ブレーキディスク全体のパフォーマンスは大きく変わってきます。ディスクのスロットの設計時に検討する数多くの要素の中からいくつかを以下に挙げます。


 

• スロットの深さ
• スロットの角度
• スロットの長さ
• スロットの数

ブレンボとブレンボ・レーシングでは、ブレーキディスクの適用性や用途、ドライバーの好み、対応車種やシャーシに関する技術要件などに基づいて、おもに4種類の表面パターンのディスクを提供しています。


 

                                         

 

ドリルドディスク

 

用途、動作温度、走行環境(特に雨天)のいずれの面でも幅広い適応性を発揮するディスクです。                     

 


• メリット:
他の表面形状と比べて初期制動が最も高いディスクです。ブレーキ面を常に清潔に保つことができるうえ、おおむね軽量です。


• デメリット:
ドリルドディスクは、極度の高温での使用が続くと熱による疲労亀裂やサーマルクラックが一般的に生じやすい傾向がありますが、実際は、サーキットやドライバー、シャーシのセッティングによって変わってきます。


 

 
 


                             

 

タイプI:

ブレンボ製「8ストレートスロット」タイプです。感触の安定性を重視したディスクで、サーマルクラックが生じにくいよう弾力性を向上させています。


• メリット: 温度に関わらず安定した制動力が得られ、摩耗しにくく、表面が常に清潔に保たれるディスクです。


• デメリット:タイプ1のスタンダードディスクは、ドリルドディスク、タイプIII、タイプVと比較すると初期制動や食い付きは低めです。


 

                       

タイプIII(アグレッシブタイプ):
                          

モータースポーツ用に開発したディスクで、初期制動が高く、ペダルのリリースがスムーズなディスクです。

 • メリット: 信頼性とコントロール性が全体的に最も高いディスクです、ペダルの操作が短時間で済むのが特徴です。ラップタイムを上げるにはペダル操作が短い方が有利です。


 • デメリット: Any タイプIIIのようなアグレッシブな表面形状のディスクは、パッドやディスクの表面をすり減らし、パッドの摩耗が早まったりパッドが不均等に摩耗したりする可能性が高くなりますが、実際は、車両のセッティングやコースレイアウトなどによって変わってきます。

 

 
 

タイプV(耐久タイプ):

モータースポーツ用に開発したディスクですが、タイプIIIと比べると初期制動は若干低めです。

距離の長い耐久レース(10時間、12時間、24時間レースなど)に対応できるよう、パッドやディスクの摩耗を抑えた設計になっています。


•  メリット: タイプIIIと同等のモジュレーション性とコントロール性を保持しつつ、レース中のディスクやパッドの摩耗を全体的に遅らせることができます。


 • デメリット: タイプVはブレンボの全タイプの中で最もバランスに優れたディスクですが、初期制動はタイプIIIほどの高さはありません。