MotoGP 2016: ブレンボが分析するオーストラリアGP

2016/10/19

 フィリップアイランドでのプレミアクラスのブレーキングを詳細解析

2016 MotoGP第16戦が、10月21日~23日にフィリップアイランドサーキットで開催されます。1956年に開設されたこのサーキットは、プロモーターであるボブ・バーナードの強い働きかけにより、500ccクラスの世界選手権を1989年に初開催しました。

メルボルンから約140キロ離れたフィリップ島にあるこのサーキットは、サーキットとしては南極に最も近く、南緯は38度。アルゼンチンのテルマス・デ・リオ・オンドよりも緯度で11度分、緯度がこのように高いため、気温の条件はかなり厳しく、ブレーキディスクが適温の状態でスタートできるようカーボンのカバーで保温しておくことも少なくありません。昨年はレース中の気温が常に15度以下、2014年は気温16度、路面温度29度というコンディションでした。

MotoGPの全選手を担当しているブレンボの専門技術者(プレミアクラスは100%にブレンボが供給)によると、フィリップアイランドサーキットは、ブレーキの難易度が最も低いランクのサーキットです。1~5に分類するとランク1。わずかの差で難易度2をつけたのがアッセンです。


 

レース中のブレーキの使い方

           

サーキットの全長は4,448メートルで、コーナーは12か所あります。そのうちの半数が、水温の低い太平洋の海水が間近に迫るエリアに配置されています。ブレーキの使用箇所は1ラップで8か所、操作時間は合計21秒ですが(ラップタイムは10分足らず)、気温が低いためブレーキ 平均減速度も低く、1.12Gです。選手がブレーキレバーを引く力の合計は約900kg。オーストラリアワイン550本分の重さです。


 

最難関のブレーキングポイント

8つのブレーキングポイントのうち、難易度が最高レベルのコーナーはなく、難易度中が6か所、難易度低が2か所です。

1速の第4コーナー(ホンダコーナー)がブレーキシステムには最も厳しく(最高圧が1.01MPa)、選手がブレーキレバーを引く力は5.8kgにも達します。時速220kmからスピードを3分の2に下げるためにブレーキを操作する距離は171メートル。これはイリエワニ24頭分の体長と同じです。操作は4.2秒間必要ですが、減速度は1.2Gと低い値です。

第1コーナーは、進入時のスピードは時速188kmですが、長さが237メートルあるため、ブレーキングの余裕が最も大きい区間です。選手は手前にある900メートルのストレートで時速344kmまで上げていて、減速度は1.5Gに達しますが、ブレーキの操作時間は3.2秒、ブレーキレバーを引く力は4.2kgです。

ケーシー・ストーナーの名を冠した第3コーナーでは、ブレーキの使用はわずかで、時間にして0.8秒、ブレーキレバーを引く力は1kg。この間の走行距離は57メートルで、これはオーストラリアンフットボールのフィールド幅の約半分です。

 

Rappresentazione dettagliata del circuito d'Australia 2016 con dettaglio curve 

 

ブレンボの優勝数

                 

ブレンボ製ブレーキ搭載マシンは、オーストラリアGPのプレミアクラスでは過去27戦中24戦で優勝をおさめています。そのうち、イタリアのマシンによる初優勝は、1994年のカジバで、ライダーはジョン・コシンスキーでした。ただし、このレースはイースタン・クリークで開催されています。フィリップアイランドでは、ドゥカティが4勝をあげていて、ライダーはすべてケーシー・ストーナーです。ライダー別の優勝回数ではケーシー・ストーナーとバレンティーノ・ロッシがともに6勝、ホルヘ・ロレンソとマルク・マルケスがそれぞれ1勝しています。ダニ・ペドロサの優勝はまだありません。