MotoGP 2016: ブレンボが分析するMotoGPバレンシアGP

2016/11/10

 バレンシア・サーキットでのプレミアクラスのブレーキングを詳細解析

2016 MotoGP最終戦(第18戦)が、11月11日~13日にバレンシア・サーキット(シルクイート・デ・ラ・コムニタート・バレンシアーナ・リカルド・トルモ)で開催されます。1999年9月19日に完成したこのサーキットには、地元出身のレーサーとして初のロードレース世界選手権チャンピオンとなったリカルド・トルモにちなんだ名前が付けられています。

1999年から毎年MotoGPの開催地となっているこのバレンシア・サーキットは、全長が約4キロで、周回方向は珍しく左回りです。タイトなコーナーと低速ギアの短いストレートを繰り返すコースレイアウトのため、平均ラップタイムはシリーズの開催地で最も低くなっています。ラップレコードも時速160.1キロと、ムジェロやレッドブル・リンクの時速186.9キロと比べてかなり低い記録にとどまっています。

MotoGPの全選手を担当しているブレンボの技術者(プレミアクラスは100%にブレンボが供給)によると、バレンシア・サーキットはブレーキの難易度で平均ランクに分類されます。難易度指数は1~5のうち3で、同じスコアのサーキットは他に8か所あり、そのうち2か所はイタリアです。興味深いことに、バレンシア以外のスペインの開催地3か所は、どれも難易度が上のランクに属しています。


 

レース中のブレーキの使い方

           

ストレートは最長でも876メートルと短いものが多いため、ブレーキの冷却が十分にはできません。ブレーキの操作時間は1ラップで29秒間以上を要し、レース全体では31%強を占めます。

減速度は平均で1.16Gとそれほど高くありません。ブレーキを頻繁に使用することからブレーキレバーにかける力の総量は大きく、スタートからゴールまでで選手1人あたり1,200kgを軽く超えます。これはMotoGPのライダー19人分の体重に相当します。


 

最難関のブレーキングポイント

バレンシア・サーキットの9か所のブレーキングポイントのうち、難易度が高ランクに分類されるコーナーはなく、難易度中が6か所、残りの3か所が難易度低です。

最難関は第1コーナーで、ここは4度の世界チャンピオンに輝いたホルヘ・マルチネスにちなんで彼のニックネーム「アスパー」の名がついています。時速330キロのアプローチから4.3秒間で時速128キロまで減速します。このとき、ブレーキレバーを引く力は5.5kg。距離は261メートルで、これは万博橋(Pont de l'Exposició)の長さのおよそ2倍に相当します。

ブレーキレバーに加える力がさらに大きいのが第12コーナーです。このコーナーの名前は、廃止前の80ccクラスで最後の世界チャンピオンとなったマヌエル・エレロスにちなんで「チャンピ・エレロス」と改名されています。ここでブレーキレバーを引く力は6.4kgに及びますが、時間では2.4秒、減速幅は時速218キロから時速120キロといずれも第1コーナーより少なくなっています。距離も113メートルで、これは2007年にバレンシアで開催されたアメリカズカップのヨット5艇分の全長にも満たない長さです。

ブレーキが最も緩い箇所は第5コーナーで、1.9秒間の操作時間、67メートルの距離で時速148キロから時速98キロに落とします。

 

Detailed representation of the 2016 Valencian Community circuit with curves detail Brembo 

 

ブレンボの優勝数

                 

ブレンボ製ブレーキを搭載したプレミアクラスは、これまで開催されたバレンシアGPの17回すべてで優勝しています。初優勝は1999年、ヤマハのレジス・ラコーニでした。ライダーの優勝数ではホルヘ・ロレンソとダニ・ペドロサがともに3勝でトップ。続く2勝がバレンティーノ・ロッシですが、2004年に優勝した後ロッシはバレンシアでは勝てていません。