プリズン・ブレーキ:ブレンボ製をかたった偽物のブレーキカバーを販売した疑いで8人を逮捕・収監

2018/07/11

 プラスチック製のブレーキカバーを使ってはいけない8つの理由

​​​​​​​​​​​​​​刑務所に収監される罪といえば殺人や強盗がありますが、偽造品の製造販売もその一つです。実際に起きた事件をご紹介しましょう。8人の日本人が偽造品を販売した疑いで逮捕されました。その偽造品とは、中国で製造された、ブレンボ製をかたる偽物のブレーキカバーでした。 ​

 

この「カバー」についてご存知ない方のために説明すると、ブレーキキャリパーにかぶせてキャリパーの見栄えを良くする(?)のが目的だというプラスチック製(またはアルミニウム製)のカバーで、装着するとキャリパーが完全に隠れます。 ​

 

こうしたプラスチックカバーに「ブレンボ」のロゴを付けたものを87個販売した疑いで、8人の容疑者が愛知県警に逮捕されました。​

 

この8という数字は、中国では繁栄と富の象徴とされていますが、今回ばかりはそのご利益がなかったようです。我々ブレンボの社員はみな寛大なので、ラッキーナンバー8で皆さんの気分が上がるように、8つの要点で今回の事件を詳しくみていくことにします。逮捕された8人の犯罪者のような不運な目に皆さんが遭わないことを願うばかりです。 ​​​


 

ポイントその1:ブレンボではカバーは製造していません

 

今回日本で起きたこの事件では、ほとんど注目されなかった内容に実は最も驚くべき事実があります。どういうことかというと、ブレンボはブレーキカバーと一切関係ないということです。ブレーキキャリパーにかぶせるカバーなどというものは、ブレンボは一切製造していませんし、過去に製造したことも一度もありません。​

 

ブレンボはブレーキシステムの設計開発・製造で世界をリードするブレーキメーカーです。設計段階から鉄・アルミニウムの鋳造や組立ラインにいたるまで全工程を最適化した一貫生産体制を完備し、ベンチテスト、公道走行テスト、サーキット走行テストでの検証とシミュレーションを徹底的に重ねることで、世界最高レベルの安全性と快適性、高品質を実現した製品を提供しています。​

 

従業員数はグループ全体で9,800人を超え、そのうち約10%はエンジニアおよび製品スペシャリストとして研究、開発活動に従事しています。​

 

こうしたハイレベルの技術集団であるブレンボが日々ブレーキシステムに採用している技術と研究レベルからすれば、プラスチック製のカバーなどというものは全く無縁だということは、たやすくご理解いただけるはずです。​​

 

 

ポイントその2:ブレンボ製をかたるカバー類はすべて偽物です​​​

 

ポイントその1の補足になりますが、ブレンボではカバーは一切製造していないため、市場に出回っている「ブレンボ」のロゴのついたカバーはすべて偽物です。購入先が露店だろうと、AmazonやeBayであろうと、オンラインストアであろうと「ブレンボ」のロゴのついたプラスチック製のカバーが販売されていたら、それらはすべて偽造品です。

偽造は2000年代にはびこる伝染病の一つです。世界全体で被害額は約130兆円にのぼり、80万人以上の雇用を奪いました。ヒット商品が出るたびにそのアイデアをまねてすみずみまでコピーする、それが偽造者らのやり口です。

我々ブレンボとしても、標的にされるだけの魅力が製品にあることは認識していますので、弊社では数年前からハイパフォーマンスシリーズとレーシングシリーズ製品を対象に偽造防止用保証カードを導入しています。​

ブレンボ製をかたるカバー類の場合、偽造業者がコピーしようとする製品とは関連付けのしようがありません。なぜなら、先に説明したとおり、ブレンボ純正のカバーなど世の中に存在しないからです。つまり、偽造業者はブレンボというブランドの価値の高さを十分認識しながら、我々の製造するブレーキキャリパーのコピー品は作らずに(そもそもほぼ不可能)、いんちきの代用品でごまかしている、というわけです。​​

 

 
 

ポイントその3:ブレンボ製をかたるカバー類はどれも違法です​​

 

他社が所有するブランド名を商品につけて市場で販売することは、そのブランドの所有者(今回の事件の場合はブレンボ)の専用使用権の侵害にあたります。ブランドとは、商品を競合他社製のものと区別するために会社が使用する商標です。したがって、他社のブランドを使用することは、そのブランドの使用者と購入者に対する詐欺行為です。​​


 

ポイントその4:ブレンボ製をかたるカバーには保証がありません​

 

ブレンボの製品を購入するということは、高い品質水準を満たすために設計・製造されたパーツを手にするわけですから、素材や製造工程に起因する製品欠陥の心配は不要です。設計から鋳造技術、機械加工工程からテストベンチや公道で行う各種のテスト段階まで、ブレンボは製品の細部にわたって入念な管理とチェックを行い、世界トップレベルの高い品質基準を満たしています。​

 

ブレンボ製をかたる偽物のカバー類は、我々の研究センターで開発したものでもなければ我々の製造工場で生産したものでもないため、保証は一切ありません。​​​​ ​

 

 
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ポイントその5:ブレンボ製をかたるカバーは制動力を向上させるどころか、むしろその逆です​

MotoGPマシンでは、低温時や雨天時に カーボンディスクの冷え過ぎを防止するためにカバーをかけることがありますが、公道車の場合はまったく当てはまりません。ブレーキキャリパーにカバーをかけても、当然のことながらパフォーマンス上のメリットなど一切ないからです。​

 

したがって、キャリパーの見えている部分に関しては別として、キャリパーにカバーをかぶせて使うことで制動力が向上するようなことは、快適性の面からもパフォーマンスの面からも一切ありません。むしろ、違法に市場で販売されている偽物カバーの中には、素材がプラスチックであるために熱の放散を抑えてしまったものさえあります。つまり、カバーはかえって逆効果なのです。​​


 

ポイントその6:エキスパートから見たらお笑い種​

 

キャリパーカバーは初めて目にしたとき、特に遠くからだと人目を引く、という事実は認めざるを得ません。ある程度の大きさがあって色が派手だからでしょう。いずれにせよ、ごく普通の鋳鉄製キャリパーと比較すれば、カバーをつけることで車の印象は確実にアップします。だからこそ多くの人がカバーを使ってキャリパーに色をつけたがるわけですが、我々としては、そうした人たちに対して、ここであげた理由を十分お読みのうえ購入は思いとどまって頂きたいと考えています。​

 

カバーはキャリパーの外形を覆うのが目的であるがゆえに、エキスパートの目には安物としか映りません。詳しい人が見れば、形もサイズも市販のブレーキキャリパーと違うことは一目でわかってしまいます。全体に丸みを帯び過ぎていて角がなく、本物のキャリパーならではのリブの凹凸もありません。その部分をプラスチック製のパーツで強調していますが、とてもリムに見える代物ではありません。​​

 

 
 

ポイントその7:ブレンボ製をかたるカバーは犯罪を助長します ​​

 

偽造品を買うのはたいして悪いことではないと考えている人も少なくありませんが、そうした人には、偽造が社会にとっての伝染病であるという事実認識が欠けています。偽造とは、違法な商品を市場で販売することで国家経済にダメージを与える組織犯罪に手を貸す行為なのです。道路をはじめ病院や学校の建設などに欠かせない国家の財政収入を、偽造品の流通が直接的にも間接的にも低下させていくことになるのです。​

 

偽造によって犯罪組織が得た利益は、たいていは他の違法行為にも投入されていき、法を重んじる企業に損害を与える危険性を高めます。こうした明らかな不正競争によって、法に則って事業を運営している企業の取引高を減少させ、ひいてはそうした合法的な企業の存続をおびやかすことになります。​​​


 

ポイントその8:カバーの価格に少し増額すればブレンボ純正の鍛造ディスクが1組買えます​​

 

愛車のブレーキにカバーをかけているドライバーは、そのカバーが愛車の動学的効率性の向上に全く寄与しないどころか、損なう可能性さえあることに気づいていません。カバーを買うくらいなら、その分のお金をなぜ愛車のブレーキシステムの美観と性能の向上に使わないのでしょう? ​

 

ほんの少額を追加すればブレンボのXrtaディスクが1組購入できます。このXtraディスクは、ローター面に設けられたドリル孔が足回りにワイルドな印象を与えるだけでなく、機能上のメリットも提供します。まず、孔によるこすり落とし効果でブレーキパッドの表面を清潔に保ちます。それに加えて、ブレーキシステムの空冷性を向上させ、雨天時の水膜の発生を防ぎます。これらのメリットによって、どんな路面コンディションでも常に高いレベルの効きとシャープなレスポンスを堪能できます。​

 

 

最後に​​

 

The authorities did not release the particulars of the 8 people who were arrested. But the number made us smile because it reminds us of 8 prisoners who escape from jail all together. For those of you who don't get it yet, we're talking about the TV series Prison Break, although it might be more appropriate in this case to call it “Prison Brake”.​​ ​​

 

 
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