これらのソリューションは、一貫した性能、高い制動力、調整、制御、および高温への耐性を確保すると同時に、将来のスポーティなオートバイに装備される製品のプレビューとしての役割も果たします。
2024年には、12チーム、計18人のライダーがブレンボのブレーキコンポーネントを使用しました。この忠誠心は、ブレンボが保証する極めて高いレベルの性能、信頼性、および一貫性への信頼によるものであり、それは一般消費者が最も憧れるストリートバイクにも表れています。
ブレンボは、スーパーバイク世界選手権向けのブレーキシステムを設計する際、ライダーごとにライディングスタイルに基づく独自のニーズがあることを認識し、カスタマイズされたアプローチを採用しています。同社は、高度に専門化されたコンポーネントを提供して、最高の性能、信頼性、および一貫性を保証しています。
たとえば、Alvaro Bautistaのようなライダーは、ブレーキ温度が最低温度まで下げることに苦戦しており、最適なレベルまで温度を上げるために追加カバーを使用しています。一方、Toprak Razgatliogluは、システムを冷却するためのエアダクトを有効活用しています。
MotoGPから派生したモノブロックキャリパーなどのブレンボのイノベーションは、熱を管理し、さまざまなトラックでブレーキ性能を向上させる上で役立っています。さらに、マスターシリンダーやリアブレーキレバーの違いなど、ブレーキコンポーネントのバリエーションは、フィールと制御に対するライダー個人の好みに合わせてカスタマイズできます。
この柔軟性により、各ライダーはサーキットで最大限のパフォーマンスを発揮できます。
現行のブレーキシステムの強みは、スーパーバイク選手権用として特別に設計された、ソリッド材料から一体成型機械加工され、直径34mmのピストンを4つ備えるモノブロックアルミニウムキャリパーにあります。従来のキャリパーと比較して、ブレンボが製造したものは、放熱を助ける外側ボディの冷却フィンによって見分けがつきます。
この冷却フィンによって、空気に触れるピストンの表面積が最大30%増加します。これは、かなりの熱応力を受ける領域を狙っているため、大きな利点となります。フィンのおかげで、ブレーキ時に発生する熱が効果的に放散されます。
もう1つの特徴は増幅システムであり、ブレーキフルードによってピストンにかかる油圧に加わる力を発生させます。ライダーがレバーにかける力が同じでもブレーキトルクが倍増します。
ブレンボのキャリパーは、アンチドラッグシステムでも有名です。このシステムは、スプリング式装置によって残留トルクの現象を低減し、システム内に圧力がないときにブレーキパッドがディスクに接触するのを防ぎます。言い換えれば、アンチドラッグシステムは、バイクを減速させる不要な力を排除します。
パワー、反応性、および調整:これらはブレーキマスターシリンダーに求められる重要な要件であり、ブレンボのラジアルブレーキマスターシリンダーは、この3つをすべて実現し、ユニークで比類のないブレーキフィールを実現します。優れた制動力の実現に加え、ブレンボのマスターシリンダーは、レバーにかかる力とブレーキレスポンスの間にリニア性をもたらし、あらゆるレースの状況に対応するために不可欠です。
近年、親指マスターシリンダーが普及し、ライダーはハンドル左側の特定のレバーを押すことでリアブレーキを操作できるようになり、これはコーナーを出る際のスロットルコントロールに役立っています。
また、プッシュ&プルマスターシリンダーを使用するライダーもいます。このマスターシリンダーは二重機能を備えており、ライダーの好みに応じて親指または人差し指で操作できます。人差し指で操作する場合、マスターシリンダーは親指で操作する場合よりも180°回転してレバーに取り付けられ、減速時の調整とレバーへのグリップが向上します。
カーボンはレギュレーションで禁止されているため、ライダーは直径が異なる2種類のスチールディスクから選択できます。336mm(厚さは6.5mmと7.1mm。5.5mmと6mmのバージョンもありましたが、現在は生産されていません)および338.5mmがあります。厚さには6.2mm、6.8mm、7.4mmなどのオプションがあります。また、ブレンボは、熱交換の改善に理想的なスチール製のベンチレーテッドディスクも提供しています。
過去には、厚さ305mmの8ベンチレーテッドディスクが20年ほど前に使用され、後にAMA選手権にも使用され、Ben SpiesとMat Mladin(スズキ)が複数のタイトルを獲得しました。現在、一部のライダーは、リアに218mmベンチレーテッドディスクを使用しています。
スロット付きディスクに関しては、ブレンボは厚さ6.2、6.8、および7.4mmの338.5mmディスクを提供しており、厚さ6.0、6.5、および7mmで温度を下げるために穴のパターンが異なる追加ディスクを開発中であり、後者はすでにテストとレースの両方で使用されています。
ディスク内の換気路は、換気チャンバー内のエアフローを増加させます。ソリッドディスクと比較して、冷却性が高まり、ブレーキ性能とブレーキパッドの摩耗に良い影響を与えます。
スーパーバイクではカーボンディスクの使用が禁止されており、スチールディスクでは十分な性能を発揮できないカーボンブレーキパッドも使用されていません。しかし、だからといって、ブレンボが長年にわたって焼結材料ブレーキパッドの性能を向上させてこなかったわけではありません。
通常、ライダーはZ04 パッドを使用します。Z04 パッドには、潤滑剤が使用されているため、ディスク温度が高くなってもひっかかりのない安定したブレーキが可能です。摩擦係数は50℃から0.8を超え、400℃までこのレベルを維持すます。これにより、スタートからゴールラインまでブレーキ効率が変わらず、フェード現象も発生しません。
スーパーバイク世界選手間のライダーの半数以上がマルケジーニの鍛造アルミニウムホイールを使用しています。マルケジーニは四半世紀にわたってブレンボグループの一員となっています。マルケジーニのホイールは、40年にわたって積み上げた専門性により、バイクの大幅な軽量化を実現し、加速と方向転換時の敏捷性を向上させます。
同時に、最先端の設計手法と徹底的なベンチテストおよびサーキットテストにより、高い剛性と信頼性を保証します。スーパーバイクのライダーは、フロントにY字型5スポークホイールか軽量7スポークホイールのいずれかを選択できます。
1988年以来のチャンピオンの選択
80年代:第1回スーパーバイク世界選手権レースの主役
スーパーバイク世界選手権は1988年に誕生し、ブレンボのブレーキはグリッドに並ぶほとんどのバイクに採用され、瞬く間に注目の的になりました。
4月3日にドニントン・パークで開催された第1ラウンドでは、レース1でビモータのDavide Tardozziが、レース2ではドゥカティのMarco Lucchinelliが優勝しました。両バイクとも5mm厚の鋳鉄ディスクと、4本のボルトで固定されたブレンボの2ピースキャリパーを使用し、直径の異なる4つのピストンを備えていました。
ホンダのRumiチームもブレンボのブレーキを使用しており、Fred Merkelが1988年と1989年の両方で、常に最後のラウンドで選手権タイトルを獲得しています。
トップチームが好んで使用する焼結パッドに比べると性能的には劣るものの、当時はコストを抑えるために有機ブレーキパッドを使用するライダーもいました。特にキャリパーに関しては、アキシャルタイプがまだ使用されていたのに対し、ラジアルデザインは後からデビューしたため、500クラスとは大きな隔たりがありました。
90年代:カーボンディスクの短い幕間
ブレンボは、鋳鉄ディスクの限界を認識し、バイクの重量が異なるものの、まずスチールディスクを導入し、次に500クラスで使用されていたものと同様のカーボンディスクを導入しました。ドゥカティは、直径273mmのディスクを採用した851から始まり、直径290mmのディスクを採用した888まで、主にカーボンを使用しました。
ホンダは直径308 mmのものを使用しました。ボルゴ・パニガーレの赤いバイクは、このカテゴリーで絶対的な存在となり、次々とタイトルを獲得しました。
馬力の増加に対応するため、ブレンボは19x18のブレーキポンプを導入しました。これは21年間にわたってスーパーバイクの標準となり、キャリパーピストンのサイズも36mmまで増加しました。
カーボンが使用された最後のシーズンは1994年でした。翌年からはスチールディスクと焼結パッド、有機パッド、またはカーボメタリックパッド以外は認められないと公式に発表され、レギュレーションではディスクは鉄材料製でなければならないとされ、新材料は禁止されました。カーボンは1994年全体を通して採用され、すでに使用されていたアキシャルモノブロックキャリパーに加えて2種類が使用されました。一部のチームは、コストを抑え、より市販モデルに近づけるために鋳鉄を使用しました。
1994年末には、新しいスチールディスクとさまざまな摩擦材を組み合わせたテストプログラムがムジェロで実施され、翌年もヘレスで実施されました。これにより1995年のセットアップが定まり、最初のシーズンはカーボンに慣れたライダーのスタイルを洗練させるためにさまざまな変更が加えられました。
ドゥカティは、Carl Fogartyの才能によりリードを保ち続け、916と996にはそれぞれ4つのタイトルを獲得しました。また、SBKで初めてラジアルマウントモノブロックキャリパー開発の恩恵を受けたTroy Corserがチャンピオンを獲得しました。
2000年代:ブレンボの新しいソリューションがドゥカティの覇権に貢献しました
2000年代初頭、ドゥカティは、メインライダーが頻繁に交代したにもかかわらず、グリッド上で最高のバイクであることを証明し、製造元の中でも誰もが認める王者であり続けました。
999は、革新的なディスクの実験の試験場であったにもかかわらず、選手権ではなんと63レースで勝利しました。ブレンボは、直径320mm、厚さ6mmのソリッドディスクに加え、直径290mm、厚さ8mmのベンチレーテッドディスクを導入しましたが、これは変形しやすいためすぐに廃止されました。
4つのキャリパーピストンのサイズは34mmから38mmに拡大し、ブレンボは初めてキャリパーあたり4つのパッドを導入したZ03を発表しました。これは、現在でも耐久レースで使用されています。過去10年間で最も成功を収め、3度の世界タイトルを獲得したライダーであるTroy Baylissは、このパッケージ全体を巧みに活用していましたが、後に、レース全体を通じて一貫したした性能を発揮できる摩擦係数の高いZ04焼結パッドに切り替えました。
2010年代: ブレンボのEvoキャリパーがSBKの標準になりました
2010年代は、王座に座るバイクが入れ替わったにもかかわらず、すべてのライダーおよび製造元タイトル獲得者がブレンボのブレーキを使用していました。アプリリアは、Noaleブランドとブレンボを使用してすでに250で世界チャンピオンになったMax Biaggiとのカップルを含む3つのタイトルを獲得し、1つはドゥカティが獲得しました。
その他のタイトルはカワサキが獲得し、Jonathan Reaが記録を塗り替え、5年連続(2020年を含めれば6年)で世界チャンピオンに輝きました。また、これまであまり活用されていなかったリアブレーキの制御に使用されたインデックスポンプの貢献もありました。
スチールでのテストにより、高温時の耐熱性が向上しました。328mmのディスクを好むライダーもいれば、336mmを選ぶライダーもいましたが、厚さは5.5mm~7.1mmとさまざまでした。
ブレンボは、モノブロックキャリパー以来最も先進的なソリューションであるEvoキャリパーを発表しました。それによって、標準的なキャリパーに比較して表面積が25%大きいパッドの使用が可能になりました。数年後、クイックリリースとブリードスクリューを装備し、さらに技術的に進歩したEvo2 が発表されました。
2020年代:フィンとアンチドラッグソリューションによってブレンボのリーダーシップを確固たるものになりました
2020年代は、Reaとカワサキが最後のタイトルを獲得し、ヤマハのToprak Razgatliogluがそれに続いたことから始まりました。これは、ブレンボが2021年に導入したアルミニウムモノブロックキャリパーと同様、歴史の転換点となりました。このキャリパーは、冷却性を向上させるとともに、ピストンにかかるブレーキフルードの液圧と組み合わさってさらなる力を発生させ、増幅させるフィンを外側ボディに備えています。それと同じくらい重要なのは、残留トルクを低減する革新的なアンチドラッグシステムです。
2022年には、ドゥカティは11年ぶりにV4 RとÁlvaro Bautistaの活躍によってタイトルを獲得しました。2023年に、Bautistaは11連勝を含む驚異的な27勝を挙げ、カテゴリーポイント新記録を樹立して連覇を達成しました。
怪我による離脱もあったものの2024年のチャンピオンに輝いた、才能溢れるToprak Razgatliogluに阻まれ三度目のタイトル獲得はなりませんでした。Toprak RazgatliogluはBMWに移籍した後、ディスクの厚みを6.8mmから7.4mmに増やし、それが自身のライディングスタイルに適していると判断しました。