MOTO GPインフォグラフィック

 

​レーシング界におけるBremboブレーキディスクの発展

1970年代前半に果たしたモーターサイクルレース界へのデビューから今日に至るまで、Bremboは4種類の異なるマテリアルを使用してブレーキディスクを創り上げてきました。125ccおよび250ccクラス向けに軽量化を目的として80年代まで使用されたプラズマコート処理のアルミニウムディスクから始まり、鋳造アルミニウムで製造されたキャリアとそのキャリアにネジ留めされた鋳鉄製ディスクローターを備えるフローティングディスクに移り変わり、更にそこからアルミニウム製ディスクキャリアとステンレス製のディスクローターを持つフローティングディスクが開発されました。そして1990年代の初めには革新的な新素材が出現します。これが「カーボン」であり、Bremboはこの新素材をプレミアクラス・モーターサイクルのディスク製造に活用し、まずは500ccから、次にMotoGP、そしてその後すぐに250ccクラスへの導入も行いました。

 

 

 

​ブレーキディスク

​カーボンディスクはばね下質量を大幅に削減するとともにジャイロ効果を抑えることで、バイクのハンドリング性を向上させて従来のスチール製のコンポーネントとは比べものにならないほどのハイパフォーマンスを実現させました。しかし、カーボンディスクにも欠点がありました。カーボンディスクの場合、作動温度が適正な値まで上がらないとブレーキが十分に機能しません。このため、パイロットはファーストラップ(レース前の走行練習)とスタート後の第一コーナーを利用してディスクの温度を適切値まで上昇させる必要があります。しかしMoto GPのレース日に雨が降る場合は天候条件により適正な温度の維持が難しいと判断されるため、ブレーキディスクはスチール製のものが使用されています。雨さえ降らなければ、気温の低い日であってもカーボンディスクを使用できる可能性はあります。この場合はブレーキを使用していない間も適切な作動温度が維持されるようチームで開発した保護カバー等を使用して既定条件(下記を参照)をクリアさせておく必要があります。

 

 

 

ディスクタイプ

​2014年のラストシーズンで、MotoGPクラスのカーボン製フロントディスクブレーキの測定規則が変更されました。これまではフロントディスクに対して2種類の規定があり、ほぼすべてのトラックで利用可能なディスクとしては320mm、茂木での強制ルール、そしてバルセロナとセパンでの任意ルールとしては340mmが定められていましたが、この変更によりすべてのトラックで320mmと340mmの両方のディスクの使用が許可されることとなりました。ただし、茂木での340mmの強制ルールはそのまま残されています。

 

 

 

ブレーキパッド

MotoGPチャンピオンシップ・レースで使用されるBremboのカーボン製ブレーキパッドは、高い摩擦力と安定した効率性、特にディスクが高温になっても正常な動作範囲を維持するパフォーマンスが特徴です。Bremboのカーボン製ブレーキパッドが提供するこれらの性能は、レース中の優れた制動性を衰えることなく一貫して保ち続けるのに不可欠な要素です。ただし、最高温度を超過すると、カーボンの摩擦係数が変化してフェード現象が発生することにより制動性能が低下してカーボンディスクおよびパッドの摩耗が急激に進行する恐れがあります。

 

 

 

ブレーキマスターシリンダおよびレバー

​ラジアルブレーキ・マスターシリンダの歴史はBremboがブレーキシステムに革命をもたらす特許を初めて取得した1985年に始まりました。その技術は最初にレース部門に採用されましたが、そこにはレース用バイクの限られたスペースに対する徹底した省スペース化という厳しい課題が待ち受けていました。これに対しBremboは寸法調整によるソリューションのほか、人間工学的なアプローチにおいても研究を行い、ドライバーの操作性を改善することでレバーの作動効率を高めることに成功しました。この構造的調整により様々なメリットが生まれましたが、特に油圧の作用と機械的動作の組み合わせを最適化するよう考慮したブレーキマスターシリンダの設計を可能にし、製品のパフォーマンスを向上させたことに対する功績は非常に大きなものでした。1986年になるとラジアルブレーキ・マスターシリンダは既にトラック上で採用され、アメリカ人ロードレーサー、エディ・ローソンのYamaha YZR OW 81に搭載されました。Lawsonはその年に500ccクラスのチャンピオンシップで優勝しています。レース終了後、LawsonはBremboが提供する優れた応答線形性を賞賛しました。これによりBremboは既存のアイデアを更に発展させ、新たなシールを導入すると共にハンドルバーとレバー間の距離調節機構の改良にも取り組みました。.

 

 

 

​ブレーキキャリパー

BremboのMotoGP向け4ピストン・モノブロックキャリパーはアルミリチウム合金の単一ブロックで構成されています。キャリパーボディの形状は質量と剛性の関係を最適に保つよう考慮して設計されており、表面にはニッケルメッキ処理が施されています。一般的なロードバイクに使用されているキャリパーとの最も大きな違いは、キャリパーのパージとフィードの「クイックカップリング」の存在です。この機構が設けられることにより、テストセッション間または同一セッション中のキャリパーの交換またはエアパージが素早く行えます。