スズキハヤブサ ブレンボキャリ パ-STYLEMAを 搭載して復活

2021/04/12

 スズキのハヤブサ:伝説の名車がブレンボの108mmピッチSTYLEMAキャリパーを搭載して復活

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偶然か、運命か。信じるか、信じないか。受け止め方は人それぞれ違っても、今回ご紹介するブレンボとスズキをめぐるエピソードに肩をすくめる人はいないはず。ブレンボとスズキ、両者の連携は数々のレース戦績(2020シーズンではMotoGPをジョアン・ミルが制覇し、世界耐久選手権ではSERTが世界タイトルを獲得)をあげるとともに、公道モデルの採用台数も増え続け、より強固なものになっています。​


この協力関係を明確に示す最近の例が、伝説の名車に数えられてきたハヤブサ、その第3世代の誕生です。最新モデルでは、低中速域の出力を増大するエンジンの改良をはじめ、数多くの刷新が技術面と設計面の両方で加えられており、そのなかの一つがブレンボの108mm(4.25インチ)ピッチのStylemaフロントキャリパーです。​

 

2013年に製造が始まった第2世代のハヤブサに採用されていたブレンボの32mm径M4キャリパーと比較すると、今回のStylemaでは大幅な改善が図られています。Stylemaの特徴は、コンパクトで軽量な設計と、抜群の通風性、そして彫りの深いフォルム。性能面ではハードブレーキングに対する圧倒的な強さを確保しています。​


 
 

映画『スライディングドア』のように​​


ハヤブサが誕生したとき、その名が日本語で鳥のハヤブサを意味するということを知る人は、ヨーロッパにもアメリカにもいませんでした。ハヤブサは時速385キロ(239mph)もの特有の高速で獲物を捕らえる、世界最速の動物とされています。​


そして、世界最速の公道仕様バイクとなったのが、1999年に誕生したスズキのハヤブサです。時速312キロ(194mph)の最高速度を達成させたのは、1,299ccの直列4気筒エンジンと、空気力学を徹底的に盛り込み、空気抵抗を最小限に抑えるボディーラインでした。​


奇しくも同じ1999年、ロードレース世界選手権の最高峰である500ccクラスで、スズキのマシンは、ブレンボが開発・製造したラジアルマウントキャリパーを世界で初めて採用しました。それまでのレースマシンのフォークには取り付けが難しいこともあり、採用してプレミアクラスに臨むなど無理だと思われた新技術でした。​


当時、ブレンボのラジアルマウントキャリパーは、剛性と硬度の確保に最適との判断で108mm(4.25インチ)を中心距離としていました。​​

 

1999年、ケニー・ロバーツJr.がスズキのRGVを駆って4勝をあげ、500ccクラス2位でシーズンを終えた好戦績にも、このラジアルマウントキャリパーが貢献しています。翌2000年にも彼は4勝と表彰台5回の快進撃を続け、シーズン終了まで2戦を残す段階で早々と世界タイトル獲得を決めています。​


時を経て、ブレンボのラジアルマウントキャリパーは、500ccクラスからMotoGPに至るまで、優れたレスポンスと最高の制動力を求める選手たちにとって標準パーツとなりました。​

しかし、ほどなくしてレース仕様から公道仕様として量産が始まることになります。ブレンボの技術者はキャリパーのサイズダウンを選択し、中心距離も100mm(3.9インチ)に減らしました。それ以来、100mmがヨーロッパの公道バイク用ラジアルマウントキャリパーの標準取り付け寸法となっています。 一方、日本ではスーパースポーツ車の公道仕様とレース仕様との間で取り付け方は変えないでおくべきとの意向から、108mmのマウントピッチが維持され、日本製のほとんどのスポーツバイクにおける標準取り付け寸法として定着しています。 ​


こうした経緯があり、2017年末にブレンボがStylemaキャリパーを発表した際にはヨーロッパのメーカー向けには中心距離100mmのStylemaを供給し、別途108mmバージョンをスズキのハヤブサ専用に開発した為、ハヤブサが世界初の108mmバージョン搭載マシンとなったのです。 そして、ほんの偶然でそうなったものの、初めてハヤブサを生み出したスズキと、初めてラジアルマウントキャリパーを生み出したブレンボが、1999年からぐるりと一周して元に戻った、そんな印象を抱かずにいられません。 ​

 

 

STYLEMAの特長​


Stylemaのピストンは30mm(1.18インチ)径で、従来のキャリパーと比べて大幅な軽量化を実現しています。​


油圧系統内のブレーキフルード量を減らすと同時にキャリパー本体の剛性を上げることによって、ブレーキレバーのレスポンスが早くなりコントロール性が向上、すなわち安全性が大幅に高まります。​

Stylemaではこれらすべてを実現させながら、スタッドボルトを低くし固定ネジを短くすることでキャリパー本体を9%軽量化しました。さらに通風性の改善も忘れていません。ピストン周囲の通気エリアを拡張し、中央のブリッジ部分には開口部を設けて、空気が流れ出やすくしました。​


この効果を明確に示すのが、ブレーキフルードの温度上昇の10%低減です。沸点まで達しにくくなったため、ベーパーロック、すなわち気泡がブレーキレバーの動きを吸収してブレーキが効かなくなってしまう現象が生じるのを防ぐことができます。​


 

STYLEMAならではの外観​


第3世代のハヤブサに採用される、ブレンボのStylemaが他と異なる点として108mmピッチの他に挙げられるのが、ピストンへの供給部です。フィラーネックの位置(MotoGP採用キャリパー特有)が、引き締まった力強いヘッドライトとマッチして、“レースマシン”らしい表情を前輪全体に与えています。​


ハヤブサのボディーラインのたくましさは、Stylemaの2本の凸部にも反映されています。従来のモデルと比較すると、車体とキャリパーが同じ流線型のフォルムを共有する一体感があり、よりシャープで引き締まったそのデザインは、状況を問わず走りの楽しさを高め、見た目も満足させてくれます。​


 

ハヤブサの空気力学を強調する配色にこだわり、ハヤブサの羽を連想させます。このコンセプトに沿って、Stylemaキャリパーの鋳造アルミニウム製本体は、いぶした黒色に塗装仕上げし、ロゴは機械加工で施したうえにシルバーで目立たせています。​


スズキのハヤブサと、ブレンボのStylema。世に出てすぐ別の道をたどった両者が、再び一つに。これは単なる偶然ではありません。​. ​


 


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