F1:GP未勝利が長いチーム

2022/04/04

 フェラーリの優勝は約2年半ぶりでしたが、もっと長く低迷するチームも。F1未勝利の最長を調べてみました。

​​​​​​​​​

新シーズンが開幕し、マシンも優勝者も新たな顔ぶれです。バーレーンGPではシャルル・ルクレールが、過去2シーズンで1勝もあげられなかったフェラーリチームに勝利をもたらしました。フェラーリの前回の優勝は2019年シンガポールGPで、セバスチャン・ベッテルとルクレールがワンツーフィニッシュを飾り、マラネロが故郷に勝利をもたらしました。​


 

その後45戦、例えば2019年メキシコGPでベッテルが1.766秒差の2位だったように勝利に何度か迫りながらも、その喜びをティフォシたちは味わえずにいました。2021年はルクレールがトップ周回60周、カルロス・サインツJr.が12周の快走を見せたものの、チェッカーフラッグは一度も受けずに終わっています。 


今回、ブレンボ製ブレーキ搭載のフェラーリに勝利の走りが戻ってきました。その始まりは1975年、ピエロ・フェラーリが父のエンツォ・フェラーリにブレンボのアルベルト・ボンバッセイを紹介し、エンツォがF1マシン用のブレーキディスクの供給を依頼したことでした。以来、跳ね馬エンブレムのマシンは常にブレンボのブレーキとともに187回の勝利を積み上げて今日に至ります。 


未勝利が途切れたこの機会に、F1未勝利の最長期間をランキングで見てみましょう。ランキングではチーム別にGP参戦数のみカウントし、諸般の事情で不参戦のGPや、シーズン当初から不参戦のGPは除外しています。未勝利最長期間トップ10を期間の短い方から紹介します。 ​


 

10位:ジョーダン(56戦未勝利) 


エディ・ジョーダンが創設したジョーダン。1999年イタリアGPをハインツ=ハラルド・フレンツェンが制して以来優勝から遠ざかり、次の優勝は2003年のジャンカルロ・フィジケラによるブラジルGPでした。アクシデントが相次ぎ赤旗終了となり、その時点でトップをわずか1ラップだけ守っていたフィジケラが優勝者となった劇的な勝利でした。ジョーダンは未勝利の4年間にドライバーだけでなくエンジンサプライヤーもホンダからフォードに変更しましたが、ブレーキはブレンボのままです。 ​


 

 

9位:ロータス(57戦未勝利) 


ロータスもアイルトン・セナの時代にブレンボ製キャリパーを長く使用していましたが、この57はセナより前の時代の数字です。1978年オランダGPでマリオ・アンドレッティとチームメイトのロニー・ピーターソンがワンツーフィニッシュを決めた後は低迷が続き、それを終わらせたのが1982年オーストリアGPのエリオ・デ・アンジェリスでした。ケケ・ロズベルグをわずか100分の5秒差でかわして優勝。それを最期の喜びとしたかのように、チームの創設者コーリン・チャップマンは数か月後に急逝しました。


 

 

8位:フェラーリ(58戦未勝利) 


世界最大の人気と最多勝利を誇るチームが苦戦の時代に入ったのは90年代の冒頭でした。1990年スペインGPでアラン・プロストとナイジェル・マンセルがワンツーフィニッシュで表彰台に上った後、未勝利が3シーズン続きました。これに終止符を打ったのが、1994年ドイツGPのゲルハルト・ベルガーで、ポールトゥーウィンでチェッカーフラッグを受けました。


 

 

7位:ルノー(64戦未勝利) 


1979年から1983年までに15勝を挙げてコンストラクターズチャンピオンも目前だった、フランスのルノー。1983年オーストリアGPでアラン・プロストが優勝し、その次の優勝がおよそ20年後だとは誰が想像できたでしょう。ルノーは1984年と翌1985年も低迷が続いた後、F1から撤退し、その後2002年に復帰しました。したがって、不参戦の16シーズンはランキングから除外しています。復帰後の初優勝は、2003年ハンガリーGPのフェルナンド・アロンソでした。​


 

 

6位:ティレル(70戦未勝利) 


Aケン・ティレルが創設したこのチームは、1970年から1998年まで中断なくF1に参戦した、アルプスの向こう側の国のコンストラクターとしては珍しいチームですが、最後の15年間は1勝もできませんでした。ただ、1970年代には21勝を挙げ、最後となった1978年モナコGPでは、パトリック・デパイユが3位グリッドから勝利を獲得しています。絶望の4年間を経て、ティレルに優勝が戻ったのは1982年ラスベガスGPで、舞台はまたしても市街地コース。ミケーレ・アルボレートが大差で優勝を飾りました。 ​


 

5位:マーチ(75戦未勝利) 


マーチはF1での197レースでわずか3勝と戦績に恵まれなかったチームで、その3勝はすべて参戦開始後7シーズンで獲得したものです。初優勝は参戦2戦目の1970年スペインGPで、ドライバーはジャッキー・スチュワート。後続と1周以上の差をつけての圧勝でした。その次の優勝は1975年のオーストリアGP。大雨によりコース54周中29周目でレースが中断、その時点でトップを走行していたヴィットリオ・ブランビラが勝者となりました。 ​


 

​ 

 

4位:ウィリアムズ(130戦未勝利) 


F1の勝利から約10年遠ざかっているウィリアムズ。直近の勝利は2012年にパストール・マルドナドがポールポジションスタートで獲得したスペインGPでしたが、その前はさらに7年半さかのぼった2004年のブラジルGP。トップを5台が争う異様なバトルをファン・パブロ・モントーヤが制しました。つまり、フランク・ウィリアムズが創設したこの名門チームの優勝は、2005年から現在まではたった1勝にとどまっています。​


 

3位:マクラーレン(170戦未勝利) 


一方、低迷期に終わりを告げる成績で先シーズンを締めくくったマクラーレン。前回の優勝は2012年ブラジルGPまでさかのぼります。この日はミハエル・シューマッハにとって最後のレースとなり(シューマッハが挙げた91勝はすべてブレンボ製ブレーキ搭載マシンで獲得)、そしてジェンソン・バトンが最後の優勝を飾った、忘れられない一日です。以降、低迷に苦しんだマクラーレンを好転させた優勝は、2021年イタリアGP。ダニエル・リカルドとランド・ノリスのワンツーフィニッシュでした。マクラーレンが表彰台1位2位を独占したのは、2010カナダGP以来です。​


 

 

2位:ロータス(177戦未勝利) 


アイルトン・セナが在籍中最後の優勝を1987年アメリカGPで飾り、その後チームを去ってマクラーレンに移籍したことで、ロータスのコンストラクターランキングは低迷の一途をたどっていきました。1994年末にはレース部門が閉鎖され、F1から撤退しましたが、2010年に復帰。2年後アブダビGPで復帰後の初勝利を挙げました。ルイス・ハミルトンが途中リタイヤした後のトップをキミ・ライコネンが抜群の加速力で守り、チャンスをものにしました。 ​


 

​1位:リジェ(223戦未勝利) 


ギ・リジェが創設したこのチームは、1976年から1996年までF1に参戦し、ターボエンジンが優勢になる前、1977年に1勝、1979年に3勝、1980年と1981年にそれぞれ2勝を挙げました。しかし、1981年カナダGPをジャック・ラフィットが制した後は、表彰台を17回獲得したものの、勝負運は翳りを見せます。勝利の女神が微笑んだのは1996年、完走わずか3台というモナコGP。オリビエ・パニスがブレンボ製ブレーキ搭載のマシンで後続を抑え、トップでフィニッシュしました。​​