オーストラリア警察にとって犯人追尾にはブレーキが重要

2016/06/28

 ブレーキの性能不足が追跡の妨げにも

ゲームや映画をみると、カーチェイスで速いのは、必ずしも高性能の大型車ではありません。たいていはドライバーの腕がよくて、とっさに機転がきくものです。警察官もそうした能力を確かに持ち合わせていますが、映画と違うのは、ブレーキシステムを含む車両の構造上の特性です。


 

10年ほど前、オーストラリア警察はこれを現実的に実感したといいます。オーストラリアの6州のひとつ、ニューサウスウェールズ州を管轄する警察が、シドニーからおよそ200キロ離れたグールバーンという町にある「警察官運転技術研修センター」で、試験を何度も繰り返した時のことです。ここの試験は、他の州より一段と厳しく、隊員たちは、追跡をシミュレーションするため加速と停車をひたすら繰り返します。この試験に合格しない車は稼働できません。


 

 

 

キャリア20年のベテラン警察官が、ウェブサイト www.news.com.au のインタビューで語ってくれたところによると、かつては普通のブレーキディスクを使っていたけれど、急ブレーキを強く数回かけただけで効きが悪くなりパッドもへたってしまっていたのが、性能の高いブレーキシステムに変えてからは、交差点でより安全に減速(他の車の巻き込み防止)できるうえ、その後の加速もしやすくなったそうです。

                 

別の警察官の話では、逃走車両は自分のブレーキがパトカーのブレーキほどもたないことがわかっているので、最後まで逃げきれたケースはほとんどない、とのことです。これにはパトカーの車種も大きな要因で、フォード・ファルコンXR6ターボとホールデン・コモドアSS V8を30年以上採用しています。

 

 
 

市販車との違いは、ランプ、アンテナ、警察のステッカーはもちろんですが、何よりブレーキシステムが違います。

4リッターターボエンジンのファルコンXR6は、馬力270 kW、トルク530 Nm。このハイパワーに対抗できるブレーキとして、ブレンボの4ピストン固定キャリパーと鍛造ディスクが採用されています。

追跡走行には頻繁な急ブレーキがつきものですが、このシステムなら、そうした追跡が長く続いても高い反応性と正確な制動性を維持できます。しかし、オーストラリア警察は、国内にある2社の製造拠点がいずれも閉鎖されるという知らせを受けて、パトカーの供給元について見直しを迫られそうです。

フォードは10月に工場を閉鎖、ホールデンは2017年末に生産を終了する予定です。代替としてどんな車種が採用されるのか、ブレンボがOEM供給を行っている車種も含めて、さまざまな仮説が検討されています。