MotoGP 2017アルゼンチンGPのブレーキングをブレンボが徹底解説

2017/04/05

ロッシ、マルケス、ロレンソ、ビニャーレス、そしてイアンノーネを待ち受けるブレーキの難所

激戦の興奮は南米へと舞台を移します。アルゼンチンのテルマス・デ・リオ・オンドで4月7日~9日にアルゼンチンGPが開催されます。

アルゼンチンの北部、サンティアゴ・デル・エステーロにあるこのサーキットの設計を手がけたのはヤルノ・ザッフェーリ。

イタリア人の設計者です。プレミアクラスの全チーム全選手が採用するブレーキも、イタリアのブレーキメーカー、ブレンボが供給しています。

このテルマス・デ・リオ・オンドでは毎年数多くのカーレースが開催されるため、アルゼンチンGPに臨むMotoGPマシンは、非常にダーティーな路面コンディションでレースを迎えることになります。

2016年の初日のフリー走行ではコースは砂だらけで、ラップタイムが1分43秒~1分44秒という結果でしたが、このタイムは丸一日も経たないうちに予選1回目と2回目で3秒以上縮まりました。

ブレンボの技術者の分析によると、テルマス・デ・リオ・オンドは、ブレーキの難易度が中ランクに分類されるサーキットです。

難易度指数は1~5のうち3で、同じ指数の開催地は、開幕戦が行われたカタールのロサイルを含めて他に8か所あります。

 

 
 

レース中にブレーキにかかる負荷

コースにはコーナーが14か所あり、ブレーキングポイントは8か所、そのうちの3か所はT4セクションに集中しています。

この区間は、減速するにも関わらず、4区間のうちで最も速いタイムが出る区間です。ブレーキングポイントの数がテルマス・デ・リオ・オンドよりも少ない開催地は、フィリップアイランド(6か所)、そしてレッドブル・リンクとザクセンリンク(いずれも7か所)だけです。

選手がブレーキを使用する時間は1ラップあたり約30秒間で、バルセロナやミザノと同程度です。レース全体では12.5分間、総時間の30%を占めます。減速度のラップ平均は1.11Gですが、第11コーナー(時速193キロから時速159キロへの減速)が0.6Gで平均値を下げており、仮にこれを除いた場合、減速度はもっと高くなります。

ブレンボのブレーキレバーを選手が引く力をスタートからゴールまで合計すると、1人あたり約900kgで、この値を下回るサーキットはフィリップアイランドのみです。MotoGPマシンのブレーキディスクは、ブレンボの320mm径もしくは340mm径のカーボン製ですが、スーパーバイクではスチール製が使われています。

要求される物理的な力はMotoGPのマシンの方が少なくて済むとはいえ、アルゼンチンGPでのこの力の総量をスーパーバイクレースと比較すると、SBK第1戦オーストラリアでは約600kg、第2戦タイは約770kg、第3戦スペインでは約820kgとなっていて、MotoGPがスーパーバイクレースを上回ります。


 

最難関のブレーキングポイント

テルマス・デ・リオ・オンドにある8か所のブレーキングポイントのうち、難易度が高ランクにあたるのは1か所のみで、難易度中が4か所、残りの3か所は難易度低です。

最難関のブレーキングポイントは第5コーナーです。手前にある1075メートルのストレートでスピードは時速323キロに達していますが、この狭いヘアピンに突入して時速78キロまで一気に減速します。ブレーキレバーを6.1秒間操作して約6.3kgの力をブレンボのマスターシリンダーに加えます。この短時間でブレンボのHTC 64Tブレーキフルードの圧力は1.09MPaまで上昇します。コカ・コーラの缶の内圧の2.5倍に相当する圧力です。

ブレーキング時の走行距離は316メートル余りで、これは1986年FIFAワールドカップのイングランド戦でマラドーナがみせた、のちに「ゴール・オブ・ザ・センチュリー(世紀のゴール)」に選ばれたあの5人抜きドリブルの5倍にあたる距離です。

難易度中のコーナーで注目すべきは、スタートラインの通過後最初に待ち受ける第1コーナーです。ここでは234メートルの距離で時速270キロから時速106キロへ大幅に減速します。

このときの減速度は1.2Gで、第5コーナーの1.5Gは下回るものの、公道仕様のスーパーカーは多くが0.9G前後なので、それよりはるかに高い減速度です

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ブレンボの実績

ブレーキがブレンボ製でないマシンがアルゼンチンGPを制したのは、1982年、当時の500ccクラスが最後です。ブエノスアイレスで開催された1987年のGPでは、チーム・アゴスチーニでヤマハを駆るエディ・ローソンが優勝。

彼はその前の年からブレンボのブレーキを採用していました。1990年代にはミック・ドゥ―ハンがホンダで3度もアルゼンチンGPを制しています。これに貢献したのは、親指で押して操作するマスターシリンダーでした。このシステムは1992年のダッチTT(オランダGP)での骨折事故後にブレンボの技術者が発案・設計したものです。

アルゼンチンGPがテルマス・デ・リオ・オンドで開催されるようになってからシリーズは3回を数えますが、マルク・マルケスが2勝、バレンティーノ・ロッシが1勝をあげ、ブレンボ製ブレーキ搭載のマシンによる連覇が再開しています。


 

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